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Vol.10 穏やかさの重要性

シェアリングネイチャーを深めよう ジョセフ・コーネルからのメッセージ
Vol.10 穏やかさの重要性

 森林生態学者らの研究で、植物は個々に機能しているわけではないということがわかってきました。* 木は根系を通して他の木々と地下でつながっており、どの木がもっとも栄養を必要としているかによって、互いに栄養分をわかちあっているというのです。ある実験で、研究者らは1本の木を完全に布で覆い、日光から一切養分を作り出すことができないようにしてしまいました。その結果、研究者らは、近くの木々がクモの巣のような菌糸体(生きた菌の細胞)のネットワークを通して布で覆われた木に必要な栄養を与えていたことを発見したのです。

 森は世界の共同体の原型のひとつです。

 感性の豊かな人々は、自然に内在する調和、愛、喜びを感じることが出来ます。シェアリングネイチャー(ネイチャーゲーム)は、これらの資質が自然の中だけでなく、自分たち自身の中にもあることを体験するのに役立ちます。人は調和と愛を感じたとき、初めてあらゆる存在に対して思いやりをもち、協力的に暮らせるようになるのです。

 私は幼い少年の頃から、自然との深い一体感を感じたいと願っていました。そして20代前半、ヨセミテ国立公園の大自然の中で、私は自分自身が拡張し、近くの氷河湖や周囲の山々を自分の中に取り込んでいるかのような感覚になったのです。大いなる静けさを体験した瞬間でした。その体験があまりにも喜びに満ち、有意義だったため、私はずっとこのように生きていきたいと思いました。

 そこで私はこのような意識の状態を育むために瞑想の方法を学びました。瞑想は心を落ち着かせ、知覚を高め、一体感や自然への愛を与えてくれます。私は1973年以来毎日瞑想を行い、意識の拡張体験を増やそうと努めてきました。瞑想は、私にとって、すべての人々へのより大きな愛を感じさせてくれるものでもあります。ネイチャーゲ―ムのプログラムの考え方である"フローラーニング"の目的は、人々が自然との深い体験を味わう手助けをすることです。〈わたしの木〉という活動を体験する子どもは、自分の木と深いつながりを感じます。自然との直接体験は、知覚する者と知覚される者がひとつになるときに起こるものなのです。

 フローラーニングの直接体験の段階(第三段階/クマ)は、瞑想に相当する効果があります。どちらも人々に"ダイナミックな平和"と"自己の拡張"の感覚を与えてくれます。この段階のネイチャーゲ―ムは、いずれも参加者に、瞑想的な体験を味あわせてくれます。

 布で覆われた木を他の木々が「養っていた」ことを発見した研究者たちは、これは健康で旺盛な土壌においてのみ起こりうる現象であると語っています。これは人間関係においても同じことです。思いやりに満ち、お互いのもっとも高尚なところを認め合う健康な「土壌」をもつコミュニティでは、すべての個人が花開きます。

 妻と私が40年間暮らしてきたアナンダ村を訪れる訪問者は、誰もがアナンダ村の住民たちが示す思いやりと愛に大きな感銘を受けます。これは日々の瞑想とお互いのもっとも高尚な部分を尊重し合ってきたことの結果です。

 シェアリングネイチャー(ネイチャーゲーム)の指導者は、穏やかで愛に満ちていればいるほど、指導者としても、人としても成功するでしょう。私は、皆さん自身の人生に、そして周囲の人々に穏やかさと喜びをもたらすために、皆さんに毎日シェアリングネイチャーの内省的なアクティビティを行うことをおすすめしたいと思います。

Joseph Cornell
ジョセフ・コーネル
1950年米国カリフォルニア州生まれ。野外教育インストラクターを経て、1979年『Sharing Nature with Children』を発表。現在、世界的なナチュラリストとして活躍。米国アナンダ村で瞑想やヨガ、菜食主義を取り入れた自然と調和する日常生活を送っている。シェアリングネイチャーワールドワイド会長。(公社)日本シェアリングネイチャー協会名誉会長。

『シェアリングネイチャー 自然のよろこびをわかちあおう』発売中!

*「Mother Tree」(母なる木)
現在カナダのブリテッシュコロンビア大学の教授で森林生態学者である、スザンヌ・シマード博士( SuzanneSimard Ph.D )が発表。
参考サイト
http://ipps2012.wordpress.com/organizing-committee-2012/inspiration/

翻訳:藤牧智子

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.80」(2012年12月15日発行)より転載しています。
 団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。