MEMBER PAGE

Vol.7 新たな本の出版に際して

シェアリングネイチャーを深めよう ジョセフ・コーネルからのメッセージ
Vol.7 新たな本の出版に際して

 日本ネイチャーゲーム協会が、75あまりにおよぶ私のアクティビティを収録したネイチャーゲーム1&2(合併本)を出版することをとてもうれしく思っています。本のタイトルは、『シェアリングネイチャー~自然のよろこびをわかちあおう~』といい、これまでの本には収録されていない8つの新しいアクティビティ、「How Close」「Observe Nature Like John Muir」「I'm Curious About」「Trail of Beauty」「I Can See」「I Am the Mountain」「The Vibrant Peace Walk」「Nature and Me(自然とわたし=旧タイトル〈Nature in Me〉)」が加わります。下記はこの新しい本からの一節です。

 わたしが、〈自然とわたし〉を初めて体験したのは、カリフォルニア州北部にあるビドウェル公園でのことでした。妻と私は、みずみずしい緑に縁どられた美しい渓流のほとりに座っていました。川面にはカゲロウが飛び交い、吹くたびに風は大きな葉を揺らし、滝から落ちる水音は渓谷に響き渡ります。この簡単な活動は、私たちを取り巻く生命の存在をありありと気づかせてくれました。
 〈自然とわたし〉を体験した後、私たちの心には静穏が保たれ、感覚が鋭くなっていました。渓流沿いに歩き始めた私たちは、茶色に灰色がかった二つの影が流れの中を泳いで行くのを見ました。なんとカワウソではありませんか!
 川の石の模様にみごとに同化して、カワウソを見ることは容易ではありませんでしたが、カワウソが泳ぎながら遊び回る様子を10分間程観察することができました。この間、40人程の人々が通り過ぎましたが、誰もカワウソを見つけた様子はありませんでした。私たちも、〈自然とわたし〉を体験していなかったら、カワウソを見つけることはなかったでしょう。

 新しい本のネイチャー・アクティビティは、フローラーニングTM の4つのステージに基づいて構成されており、アクティビティがより探しやすく、使いやすくなっています。新しい本の中でも繰り返し強調している通り、シェアリング・ネイチャーのユニークな点は、フローラーニング戦略です。私の最初の著作、『Sharing Nature with Children(ネイチャーゲーム1)』は、「自然教育界における世界的な革命を起こし」、2作目『Sharing the Joy of Nature(ネイチャーゲーム2)』は、その方法論を体系化しました。今回の本は、これらの数々のすばらしいネイチャー・アクティビティをフローラーニング・システムに基づいて、日本の読者の皆様にご紹介するものです。

 ドイツの合併版には、「シェアリング・ネイチャーのワークショップを体験した後・・・これまでの自分とは違う自分になっていた」、「学びについて新たな理解を身につけることが出来た」というコメントがあります。フローラーニングは、自然についての教え方に革命を起こしました。教育者は、この方法を使うことにより、人々の意識を高めるダイナミックな上昇気流を起こし、より深い理解を育むことが出来るのです。

 先日、インターネットでちょっと検索してみたところ、100以上もの機関がそのプログラムにフローラーニングを導入していることを知りました。米国国立公園局は、ナチュラリストの育成やカリキュラムの開発においてフローラーニングを推奨しています。同局は、マリア・モンテッソーリ、ジャン・ピアジェ、ハワード・ガーデナーと並ぶ5つの教育理論の1つとして、フローラーニングを挙げています。私はかつてスイスの教員養成大学でスピーチをしたことがありますが、教授たちはその効果にとても興奮し、その1人が「フローラーニング以前の日々の暮らしはどんな風でしたっけ!」と熱っぽく声をかけてくれました。

 フローラーニングに力点を置いた.そして、まったく新しいシェアリング・ネイチャー・アクティビティも収録された.この新しい本は、経験豊富なネイチャーゲーム・リーダーたちにとっても、貴重な1冊となることでしょう。

Joseph Cornell ジョセフ・コーネル
1950年米国カリフォルニア州生まれ。野外教育インストラクターを経て、1979年『Sharing Nature with Children』を発表。現在、世界的なナチュラリストとして活躍。米国アナンダ村で瞑想やヨガ、菜食主義を取り入れた自然と調和する日常生活を送っている。シェアリングネイチャーワールドワイド会長。(公社)日本シェアリングネイチャー協会名誉会長。

『シェアリングネイチャー 自然のよろこびをわかちあおう』発売中!

マリア・モンテッソーリ
1870-1952

イタリア初の女性医学博士、幼児教育者。モンテッソーリ教育法の開発者。著書『子どもの発見』他

ジャン・ピアジェ
1896-1980

スイスの心理学者。乳幼児の「思考発達段階説」を提唱した。著書『思考の心理学』他

ハワード・ガードナー
1943-

アメリカの心理学者。「多重知能(MI)理論」を提唱。著書『MI:個性を生かす多重知能の理論』他

翻訳:藤牧智子(本文)
翻訳:吉田正人(〈自然とわたし〉引用部分)

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.77」(2012年3月15日発行)より転載しています。
 団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。