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イノッチのシェアリングネイチャー No.152-152〈コウゾの実〉(2021.6.10)
イノッチファームでシェアリングネイチャー NO152-152
〈コウゾの実〉
コウゾの木がオレンジ色の実をつけて風に揺れていた。毎年同じ場所で見られるので、「ああ、今年もコウゾの実が生りだす季節になったんだな~」と、時の流れの速さをしみじみと感じる。コウゾの実は食べられる。甘くておいしいのだが、雄しべの花糸が口の中に残り少しざらつく。なので、2~3粒食べれば十分だ。見た目はキイチゴのようだが、酸味と甘みのバランスが程よいキイチゴには叶わない。甘さは合格点だが、口に残るざらつき感は大きなマイナス要因だ。だが、山歩きをしている時にこの実に出くわしたら、迷わず口に入れる。同じ仲間の桑の実とは見た目も味も異なるが、これはこれでよしとしよう。いろんな味があるからこそそれを好む鳥や虫たちのエサになり、タネの散布に役立っている。別に人間が食べて旨いかまずいかはどうでもいいことなのだ。
コウゾは、ミツマタと同じ和紙の原料になると、昔どこかで習った覚えがある。だが、コウゾのどの部分をどう使って和紙にするのかまでは知らない。数年前、小国(新潟)の 和紙工房でコウゾから繊維を取り出し和紙にするまでの行程を見た時、"なるほど、そうだったのか"と納得した。和紙は結構いい値段がするが、作業工程を見ると高くて当たり前と思う。安価な商品についつい目が向いてしまうが、和紙に限らず本当にいいものはそれだけ手間暇がかかっているのだ。赤い実の少し口に残るざらつき感が、"安易に安物に流れるなよ"と戒めているかのようだった。
▶PDF版をダウンロードする 2021.6.10 NO152-152 コウゾの実.pdf
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