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私の 〜「自然が好き」で世界を変える〜(一般事業室 宮川知之)

〜僕から母への、自然が好きで、世界を変える〜

自分にとって「自然が好きで、世界を変える」こととは何だろう。壮大とも思えるビジョンに、僕自身にどのようなことが起きてきたかと、振り返っては、悩み。悩んでは振り返っての繰り返し。そんな日々を過ごし、季節も春から夏になろうとしていまして。

自然が好きな僕なのですが、僕はいったい何をしてきたのかと、ふと、母との思い出が蘇ってきました。その時の母の姿から、僕にとっての「自然が好きで、世界を変える」を振り返っていきます。

母は、誰かに病気やら何かあれば大丈夫かと訪ねに行くくらい情が深く、その上、気風が良く明るい人。その母が晩年認知症を患い介護が必要になりました。意思疎通が出来ずに、すれ違いばかり。元気な頃の母を思い出しては、あの頃に戻って欲しいという願望ばかりが心に沸き立ち、僕は苛立ち、落ち込むばかり。

ある日、母に会いに行くと、母から亡き父との思い出のドライブコースに行きたいとリクエストがありました。生まれ育った横須賀の海辺をドライブする時は、認知症の症状も、同じ話ばかりの会話も、少しは穏やかになるようでした。

ドライブの目的地は、父と母の思い出の場所、海が見える観音崎に行くこと。ここは、母が迷子になった時には探しに行ったくらい。きっと母にとっては大事な場所だったのでしょう。

そんな場所で、母のためにできることは何かなと考えて、手を取り歩きます。丘の向こうには、東京湾の海が見える場所があります。ちょうど階段が壁のようになり、その海が隠れるように見えないので、ネイチャーゲームでいえば、〈目かくしトレイル〉のよう。母はどう感じるかなと、心のどこかで期待をして歩いていました。

手を取り、ゆっくり歩く。母に山登りに連れていってくれた昔よりも、数倍も遅い歩調で階段を上ります。海からの風を感じて、向こう側が明るく感じている。母は今、どう感じているだろうか。母の横顔を見るけれども力ない虚ろな眼差し。前だけをみている。それでも手だけはしっかりと繋いでいる。

それでも、階段を上り終える頃、母の視線が、海の光と触れた瞬間を僕は忘れない。

「あーきれいだー、ありがとうね。海はいいもんだ」と声があがる。母は凛として立っている。同じ海風と海の光を感じているようで、そんな姿に出会えた僕自身も嬉しく、その時の感触、母の喜ぶ顔、息づかい、その姿、その声を忘れない。 

自然を伝えることの確かさは、この時でいえば、僕から母へと自然を感じる喜びを伝えて、伝えたことが、僕自身に喜びとして、返ってききたこと。

「僕から母へ」「わたしから、あなたへ」という小さな世界が、喜びに満ちた時間を作り出したようでした。

母を介護することは、きれいごとでもなく、辛いことが勝ることばかり。でも、あの時の道、海の風と光の中を、母と共に感じられたことは、母がいない今も支えになっているように思っています。

(一般事業室 宮川)

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コメント(1)

お母様の凛とした姿や驚いた表情が目に浮かぶようでした。ステキな風景が目の前に広がっていて、感激がましたことでしょうね。宮川さんとお母様の分かち合う瞬間も素晴らしいなあと。

2024年05月31日 投稿者:西川記世

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