スタッフブログ
イノッチファームでシェアリングネイチャー No.3 <アオムシ君、最後の食事?>(2019.12.29)
イノッチファームでシェアリングネイチャー NO3
<アオムシ君、最後の食事?>
2019.12.29
今年は12月に入っても暖かい日が多く、例年ならとっくにいなくなっているはずのアオムシがまだブロッコリーにたかってて、大勢で食事中。(何匹いるかな?)無農薬栽培なので虫が来るのは想定内、イノッチファームでは普通の光景。でも、さすがにこの時期は食慾もなく、これだけいても食べる量は大したことはない。人間が食べるいわゆる"ブロッコリー"の部分は食べないので、ご覧の通り、ちゃんとしたブロッコリーができている。
もう12月も終わりに近づき、さすがに寒い日も増えてきた。霜も降り始めて大部分のアオムシはこのままさなぎになれずに死んでしまうかもしれない。そう思うと、「好きなだけたっぷりおあがり」と、最後の食事風景を見守ってあげたくなる。アオムシの天敵であるハチやカマキリはとっくに姿を消した。だからなのかもしれないがこんなにも無防備に葉っぱの上で食事しているアオムシ君、これから温暖化が進むとひょっとしたら越冬する仲間も出てくるかもしれない。
人間にとって、野菜を食べてしまう虫は厄介者だ。一つの野菜に何十匹もたかっていたら手で取るのは大変な作業。特に野菜の苗がまだ小さい春先に食べられると大きな被害になってしまう。だから普通の農家は農薬をまいて虫を退治し、野菜が順調に大きく育つようにしている。
しかし、家庭菜園程度の面積しかないイノッチファームでは商売にするわけではないので虫食いの野菜でも一向に構わない。今までの経験からすると農薬をかけなくても全滅はしない。人間が食べる分はちゃんと残る。だからむやみにつまんで踏みつぶすことはしない。親であるモンシロチョウは花粉を運んで受粉の手伝いをするし、アオムシは鳥やハチ、カマキリなどの餌として彼らの命を支え小さな食物連鎖の輪ができている。もちろんその輪の中にはトンボやクモもいるし、コウモリやネズミ、ヘビ、カエル、カラスもいる。小さな面積しかないイノッチファームだが、農薬や化学肥料を使わないでいるといろんな生き物がやってきて豊かな生態系を作り上げている。
恐らく、つい最近(50~60年前)まではそうやってどこの畑や田んぼもたくさんの生き物と共存しながら野菜や米つくりをしていたはず。しかし、農薬を使うことでどこか一つの鎖が切れてしまうと全体のバランスが崩れ、生き物自体の生存が危ぶまれてくる(ネイチャーゲームの〈食物連鎖〉というアクティビティ)。
すでにその兆候はいたるところに出ていて危機的な状況にまで来ている。たかがアオムシ。だが、たかがストロー1本、レジ袋1枚に企業は動き始めている。農薬への危機感は??
▶PDF版をダウンロードする イノッチファーム通信(PDF)
イノッチファームでシェアリングネイチャー No.2 <犯人は誰だ>(2019.12.22)
イノッチファームでシェアリングネイチャー No.2 2019.12.22
<犯人は誰だ?>
先日畑に行った際、"カマキリの卵置き場"を何気なく見てみると、置いたはずの6つの卵のうが一つもない!写真のような場所に確かに6つ並べて置いといた。いったいどこへ行ったのかとあたりを探してみると・・・・・。無残な形になって一つだけ見つかった。
食いちぎられたのか引き裂かれたのかは定かではないが、とにかくこんな状態で落ちていた。犯人は誰だ?現場を見てないので何とも言えないが、こんないたずらをするのはあの"全身真っ黒"なヤツに違いない。何しろ奴らは毎日畑周辺を飛び回っては柿の実を食べたり、野菜をつついたりしていたずらし放題。一時、ネットが張ってあるブルーベリーの囲いに入りこんで痛い目にあっている。それ以来、"あの畑は危険"と学習していてあまり近寄らなかったが、最近仲間の誰かが"安全宣言"を出したらしくまた現れ始めた。しばらくまたヤツらとの攻防戦が続きそうだ。
さて、ではなぜカマキリの卵のうなどを集めていたかというと、春先に卵から孵化した彼らはイノッチファームにとって重要な働き手になるからだ。無農薬栽培をしているので、野菜にはたくさんの虫がやってくる。少しぐらいは食べてもいいが、全滅はごめんだ。そこで、"肉食"のカマキリに虫退治の仕事をしてもらっているのだ。資料によると一つの卵のうから300匹の子カマキリが誕生する。しかし、自然界では300匹の子カマキリが親になれるのはたった1匹。299匹はほかの肉食動物の餌になってしまうのだ。いっぱい働いてもらうにはもっともっと卵のうが必要。冬休みの間草原にでかけてもっとたくさんの卵のうを集めてこないと・・・・。今度は小屋に保管しておこう。
以前山形の養蜂家を訪ねた際、ミツバチ以外に、"アシナガバチ"の飼育もしているという話を聞いたことがある。カマキリと同じように、ハチに虫退治をしてもらおうという算段だ。待ち伏せ型のカマキリより、自由に飛び回り行動範囲の広いハチの方が効率よく虫を退治してくれるかもしれない。無農薬で安全な野菜を虫が食べその虫をカマキリやハチが食べ、さらにトカゲや鳥がそれを食べる。小さなイノッチファームでも自然界の厳しい繋がりが日夜繰り返されている。
▶PDF版をダウンロードする InocchiFarm20191222no2.pdf
風さんと遊ぼう!小さな子どもたちへのネイチャーゲーム
この週末「風さんと遊ぼう!小さな子どもたちへのネイチャーゲーム」というタイトルのアドバンスセミナーが開催されました。
年間100回近く、幼稚園や保育園での実践をこなしている徳島県の風さん(山引さん)を講師にお迎えしてのセミナーです。
何十回何百回の実践の中で工夫改良されてきたノウハウがギュギュギュッっとつまった内容で、目からウロコが落ちた参加者も多数。
プログラムは5才児の設定ですすみます。
風さんがおもむろに森の美術館の枠を地面に置きはじめると、参加者は虫眼鏡でキラキラ光るダイヤモンドを探し出す
一般の方がその光景を不思議そうに見て通り過ぎていきますが、おかまいなしです。
だって5才児だもんね。
ちょくちょく、そんなに聞き分けのいい5才児はいません!と言われる参加者たち。
それでも、追いかけっこがはじまれば、皆完全に5才児に!
10/27(日)SDGsネイチャーゲームワークショップ レポート
こんにちは、よいしょです。
2019年10月27日(日)開催しました「SDGsネイチャーゲームワークショップ」。
12名の参加者のみなさまと、自然の中で、まち中で、身近なことから、
楽しく、やわらかく、遊びながらSDGsについて考えました。
第一回の開催レポートをお届けします!
各地から集っていただきました方々の中には、なんと北海道、宮城、山梨からの参加者も!
お話を聞くと、このワークショップのために来ていただいたとのこと。嬉しいです!
また近隣からもお忙しい中、8名の方が来てくださいました。
このワークショップを開催したからこその出会いに感謝です。
「SDGsのついての知り、学び、考え、そして行動につなげるための新しい切り口」を提供できたという手応えを感じられた3時間でした。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
当日の様子と参加者のみなさまからいただいた声を
ご紹介します
当日の様子
室内ワークもあります! 活動グループづくりも楽しく。
街に繰り出す体験型プログラムも!
まちの中で「秋」をみつけた瞬間。
シェアリング(わかちあい)で気づきが深まりました。
ちょっとした合間時間もSDGs!
自然の中で、公園で楽しみたいSDGsアクティビティも。
体験を受けてのふりかえり。本ワークショップは体験第一!
参加者の声
次回の開催予定は現在準備中です。
予定が立ち次第あらためてホームページ、フェイスブック等でお知らせいたします。
シェアリングネイチャー協会の
SDGsへの取り組みはこちらから
▼
https://www.naturegame.or.jp/about_us/action/sdgs/
[風戸通信]引退までのカウントダウンスタートっ!
更新が止まった犯人は私です、ごめんなさい。
来年夏の定年退職・引退に向けていよいよ1年を切りました。
日々、カウントダウンしています。
その第一弾ということでもないのですが、デスク横の棚を身辺整理しましたら、
でるわでるわのなつかしいものが...。
94年に(参加者として)参加したアナンダ村ツアーのガイドブック。
右上にアナンディさん、左下にコーネルさんのサイン入り。
97年に開催した「ネイチャーゲーム中級指導員研修講座」で作成した資料ふたつ。
30ページほどの「ヒントとチェック」冊子と、協会レジェンド保母禎造さんの講演をテープ起こしした記録。20年以上前のものですが、今だに通用する内容の濃いものです。
日本環境教育フォーラムさんが発行している「地球のこども」という冊子(2002年8月9月合併号)で、各環境教育団体の事務所を紹介するというページにイラストを描きました。
今から2つ前の新宿三丁目花園神社近くに事務所があった頃です。今は「世界の山ちゃん」になっており、転居してから数年後に職員みんなでここに食べに行きました。
「オレ、ここらへんに座っていたんよ」「ここはクラブだったんだよなぁ」「壁がなくなっているじゃん」など、昔話に華が咲きました。
イラストページ左下に服部さん、その右上に現事務局長の渡辺さんがいます。
2005年に「川のセミナー」というのを埼玉県の長瀞でやりました。
その時のゲスト講師として絵本作家の村上康成さんをお招きしたのですが、その村上さんに当日のてびきの表紙イラストを描いてもらいました。
ついでに白いジグソーパズルにも描いてもらいました。
みんなカヌーに乗って楽しかったです〜。
そして、私のネイチャーゲーム人生で一番古い資料も発掘しました!
1992年5月にネイチャーゲーム初級指導員養成講座を受けた時の資料一式です。
参加要項、わたしの木の指導計画書、バインダー式だったハンドブック、サウンドマップとはじめましてとカメラゲームのカードなどです。
他にも「認定証」も一緒に保管されていまして、よく持っていたもんだと感心しきりです。
私が参加した養成講座は、神奈川県のこどもの国。当時養成講座と言えばずっとここばかりでした。
この時の参加者は40名を超えていて、大島さん、服部さん、三好さんら数名の講師で2泊3日を過ごした濃い時間でした。
はじめましてカードの質問1のところの「あいてのなまえ」欄に「荒巻さん」とありますが、このお方は、トレーナー仲間の荒巻太枝子さんということがずいぶん後になって判明しました(笑)。
ご本人に話したら「知っていましたよ」とのこと...汗汗。
まだ整理しきれていない箇所もたくさんあるので、次は何が発掘されるか楽しみです。
- 19年10月16日
- 投稿者:風戸若葉
自然が好き!を資格に。(7/20〜21長野)
7月21日(土)〜22日(日)に長野県のおんたけ休暇村キャンプ場にて、「ネイチャーゲームリーダー養成講座」が開催されました!
涼しい高原の緑に囲まれたおんたけ休暇村キャンプ場の心地よさもさることながら、参加者の皆さんは、主任講師・クックさんこと高橋章(あきら)さんの、いつもにこやかで「自然が大好き」「楽しい!」という溢れ出る気持ちや、シェアリングネイチャーの理念を体現されている様子が印象に残ったようです。
また、
・実習することで、日頃つかっていない(意識していなかった)感覚に気づけた。
・中身の濃い時間でした。これだけの時間集中が続けられるのはすごいです!
・学校では絶対に学べないことが学べました。自分が学びたいことが学べて夢に近づけた気がします。
・自然が好きな人のいろいろな話が聞けた。
・昼夜朝とまんべんなく実習があってよかった。
・実習後のふりかえりの講義があって、実感を伴った学びができ、より内容が入ってきた。
などなど声をお寄せいただきました(^^)
講師の高橋章さん、開催いただきました長野県シェアリングネイチャー協会のみなさま、ありがとうございました&おつかれさまでした!
そして参加者のみなさま、これから一緒にシェアリングネイチャーライフを楽しみましょう!
2019年度も自然と人との素敵な出会いの場を作っていきます!
ネイチャーゲームリーダー養成講座の開催情報はこちらから
▼
ネイチャーゲームリーダーのご案内
ネイチャーゲームリーダー養成講座開催一覧
雨の日 郵便局まで
出かけようとしたら雨が降ってきた
郵便局に行こうと外に出るとパラパラ弱い雨が降り出した
いつもは自転車で行くのだけど、自転車はあきらめて傘をさして歩き出す
せっかくなので、今日はちょっと意識を変えて「雨を楽しむ」テーマで歩いてみることにした
ビニール傘にあたる雨粒の音
「ぽつぽつ」ではないなぁ 全然ちがう
「チッチッ」でもない
「ばっばっ」かなぁ
音を表現するのって難しいなぁ
しばし静かに落ちてくる雨の音に耳を傾ける
弱い雨だけど
あっという間に
乾いている所がなくなってきた
どんどん
乾いている所が減っていく
陣取り合戦みたい
乾燥軍劣勢
がんばれ!
喫茶店の日よけから滴る雫を見つけた
ネコバスを待つトトロのように
傘で雫を受けてみる
「ばすばすばすっ」
これはいい音!
自然とトトロのように「にひっ」
とした顔になっちゃう
昔の記憶がよみがえってきた
少し意識を変えただけで、
たいくつな郵便局までの移動が
なんとも充実した道のりになってきたぞ
そして、なぜか昔の記憶がふとよみがえってきた
小学生低学年のころ
突然の夕立
駄菓子屋で雨宿り
隣に住む2歳年上のおにいちゃんが
すぐやむからと言ったのに
急に真っ暗になった空が怖くなって
猛烈な雨の中走って帰り
家に着いた時に
雨はやんでいたこと
母親にも馬鹿だねぇと言われたこと
懐かしい記憶だ
あっ見える!
ふと目にした自転車のサドル
じっと見る
東京都
タコ
犬
伊豆半島
サングラスetc
見えてきた見えてきた!
軽トラックの荷台
白いベルがいっぱいぶら下がってる
大きなユリノキの下に入ってみた
雨は落ちてこないので
傘をたたむと
葉っぱにあたる雨粒の音かな
今までとはちがう音が聞こえてくる
面白いなぁ
そして
葉っぱかわいいなぁ
こうして水に映り込む景色も面白いね
反転した世界を覗いているよう
よくドラマや映画の
夜のシーンで
雨が降っていないのに
地面が濡れているのは
わざと地面を濡らして
街灯などの光を反射させて
夜の雰囲気をつくる手法
と、昔撮影の授業で習ったことを思い出す
映画バック・トゥ・ザ・フューチャーで
デロリアンが時間を超えるシーンでも
地面濡れてたでしょ!
マンホール脇にできた
小さな水たまりを覗いてみる
すいこまれそうな
深い深い灰色の空と
傘と
自分
雨をよろこんでいる仲間
歩道のタイルの隙間に
力強く生きるコケを発見
雨 うれしいんだろうなぁ
それにしても
すばらしいぷっくり感
触らずにはいられない
しつこくぷにぷにしてごめんね
事務所下の満開のトランペット
この子たちも雨よろこんでるはず
事務所のエントランス
まだ雨に濡れてないエリアがあった
乾燥軍
がんばってたんだなぁ
事務所に到着
お疲れ様でした
何気ない日常で自然とつながる
今回歩いたのは車がひっきりなしに通る大通り
いつもは自転車でササッと行って、ササッと帰ってくる道のり
でも
・ちょっと意識を変えてみる
・心の中に楽しむゆとりを持つ
をしてみただけで、
どっぷりと自然とつながった
おだやかな時間を過ごせました
〜何気ない日常で自然とつながる〜
これって
きっと
生きていく上で
とても大切な時間
になるんじゃないかなぁ
ネイチャーゲームやってると
自然と身につく感覚なのかもね
楽しかった
渡辺 峰夫 わたなべ みねお
公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会 事務局長
最近はどっぷりと深い自然よりも、都市と隣り合わせている自然の姿が好きになってきて、特に、コンクリートの割れ目でもたくましく生きる植物や、使われなくなった人工物を飲み込んでいくような自然の姿にうっとりしている。
フォローアップセミナー [2019] 千葉県会場レポート
7月7日、七夕の日に開催された千葉県会場から、参加者の皆さんの声が届きました!
今回のフォローアップセミナーは雨。
雨の森は、静かでとても雰囲気があります。
参加者の皆さんは、カッパを着てセミナーにのぞまれたそうですが、セミナー終了の際には「雨も自然」であることに気づく方、「かえって涼しく快適だった」と振り返る方もいらっしゃったようです(^^)
講師は新井利佳トレーナー。小学校教諭ならでは!?周到な準備と、わかりやすい説明、穏やかな話し方や声のトーンに包まれながら、優しい雰囲気の中で新アクティビティに加え〈動物ジェスチャー〉〈ノアの箱船〉〈カモフラージュ〉などのお馴染みのアクティビティや、ネイチャーゲームグッズの「たんけんルーペ」を活用した〈森の色あわせ〉、〈かさね色〉〈森林浴のエクササイズ〉などなど...!たくさんのアクティビティ体験ができました!
・自然の流れでアクティビティが進み、気づけばたくさんの体験をしていました。
・気になっていたアレンジについて勉強できた
・いろいろな本の紹介があり、興味が深まった。
・講師の、野外での活動を大切にしようとしているところに感動しました!
・「ネイチャーゲームならではの自然とのかかわり」を体感する1日でした。
・アクティビティをたくさん体験できた。
・雨ならではの雨粒のミクロハイク。素敵な天然の宝石でした!
・すべての体験が新鮮でためになりました。参加して良かったです。
・講師の話し方が語りかけるように心に響き心地よかった。
・雨も新鮮に感じた。
・思った以上にたくさんのアクティビティを教わり満足です。
などなど...参加者の皆さんから、たくさんの声が届きました!
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今 年の「講義テーマ」は「ネイチャーゲームのアレンジについて考えよう 〜ねらいを達成するための工夫〜」。全国の仲間たちが小さな子ども以外にも、高齢者 や障害のある方、人数が多いとき、少ないときなど、様々な条件に合わせてアクティビティを展開しています。そうした事例を講師、あるいは参加者のもってい るアイデアを持ち寄りながら、アレンジについて考えます。
実習では、自分自身が体験者として講師のスキルに刺激を受けたり、即実践できる内容をたくさん吸収できます!
ぜひ楽しみにご参加ください!
講師の新井利佳さん、開催いただいた千葉県シェアリングネイチャー協会のみなさま、おつかれさまでした&ありがとうございました!
2019年度のフォローアップセミナー
開催情報はこちらから!
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重い障がいをもつ子どもたちに季節の自然を届けるシェアリングネイチャープログラム
(Photo : NPO法人 ひまわり Project Team)
一本の電話からはじまった歩み
(Photo : NPO法人 ひまわり Project Team)
NPO法人ひまわりProject Team 代表理事の藤原千里さんから話をいただいたのは2012年のこと。重い障害をもつ子どもたち(重症心身障害児。本文では以下「重症児」)を対象に、放課後に「自然あそび」を提供できないかと「放課後子どもひろば ひまわりHAUS」の活動について相談をいただいたことからスタート。ネイチャーゲームリーダー3~4名の協力をいただきながら毎年機会をいただき、8年目となった2019年も6月5日に訪問させていただきました。
重症心身障害児とは・・・
重度の知的障害及び重度の身体障害(肢体不自由)を併せもつ(重複障害)子どもたちのことです。障害が重く、ほとんど全面的な生活介護が必要なだけでなく、てんかんなどの他、呼吸機能、嚥下機能、消化器、姿勢など医療的管理が絶えず必要とされます。
参加者である重症児の子どもたちにとって、近所の公園の自然であっても「遠い場所」でした。車いすの子どもや、寝たきりの子ども、気管切開をしている子どももいます。段差はもちろん、土埃をはじめとするさまざまな自然物に対して注意が必要な場合もあります。また体温調整の難しさから暑さ、寒さ、日差しなども外での活動を制限する要因となります。こうした状況から屋外での活動においては、医療関係者の付き添いが必要な場合があるのです。
シェアリングネイチャーならではの
自然あそびと込める願い
唐突ですが「サザエさん」の歌を思い出してみてください。オープニング、エンディングの映像に「季節の自然の様子」が流れています。参加する重症児の子どもたちも、こうしたテレビの映像を見て「今の季節の自然物」を見ているそうです。しかしそれらはあくまでも映像としての情報であり、その手触りや大きさ、細かな色合いなどは知らないかもしれません。
「見たことがある」「聞いたことがある」けれども、直接はふれたことのない自然との出会いを作り、「知っている」に変えていきたいというのが、最初にお聞きした代表理事の藤原さんの思いでした。
そこで考えたのが、子どもたちが野外に出られないなら、自然に来てもらおうという逆の発想、「季節の自然を配達しよう」です。そして季節の自然を活動場所である養護学校に届けるためにどうしたら良いかアイデアを出していきました。
プログラム(1時間)の概要(2019.6.5の実施内容)
・みんなが知ってるトトロの音楽とお話で導入
・トトロの木と落ち葉など、季節の落し物を楽しもう
・旬の野草、野の花がやってきた
・旬のハーブを楽しもう。鼻をいっぱい使おう
・昆虫観察カップで虫観察
・ドングリマラカスを作って合奏しよう
・季節のクラフトのお土産プレゼント
受け身と積極性
(Photo : NPO法人 ひまわり Project Team)
プログラム案を組み立てていくにあたり感じたことが「私自身のこれまでの経験とのギャップ」です。
ネイチャーゲームの活動は参加者が主体的に動き、自分自身の五感、感性で自然を楽しむことが特徴です。しかし重症児の子どもたちは、身体を動かすことや、発語が難しい場合もあります。このことから、こちらの提供が多くなってしまうとともに、言葉のキャッチボールも難しく、「参加者が受け身になりすぎるのではないか」と感じてしまったのです。これについて初年度にまとめた実践報告で下記のように振り返っています。
この悩みに対して代表の方に言っていただけたのが「重症心身障害をもち手足が不自由な子どもにとって、触ること自体がとても能動的なことです」という言葉です。言葉を介しての意思表示やわかちあいが難しいとき、子どもたちが受け身の状態に見えるかもしれませんが、子どもたちが興味をもつということ、そして見ようとすること、触ろうとすること、耳を傾けること、においをかぐこと、これらが「自分自身の感覚を使う」という意味で、とても能動的な状態と言えるのだと気づかせていただきました。
地域活動事例より抜粋・再編(2013 年 3 月 15 日)
そして感覚統合へ
(Photo : NPO法人 ひまわり Project Team)
本当に「知っている」とはどういうことか? 情報が溢れる社会になり、自分自身を振り返っても、安易に「知っている」と言ってしまっていると感じるときがあります。健常の子どもたちと遊ぶときにも、虫についてとてもよく知っているのに、「実物を見るのははじめて」ということがよくあります。本や図鑑から学び、たくさんの情報を知っていることは素晴らしいことですが、「本を見て知っている」と「実物を通して知っている」には大きな差があります。その差は実物を目の前にした、その子どもの輝く瞳からも伝わってきます。このことは、ひまわりHAUSの子どもたちも同様です。
ひまわりHAUSの活動目的の一つに「感覚統合」があります。たとえば、『赤+甘酸っぱい匂い+丸い+硬い+美味しい=リンゴ』と言ったつながりを理解するのは非常に難しいのですが、時間をかけて継続して刺激が入ることで理解できるようになります。五感の刺激を一つのものとして理解することができるようになり、子どもたちの興味はより一層深いものになります。身近に触れることの少ない自然界の物に対しては見ただけ、触っただけ、聞いただけでも喜べるのですが、見て、触って、聞いて、それが何かを理解できるようになることを目的にすることで継続していく価値はより高くなると思っています。
(NPO法人ひまわり Project Team 代表理事 藤原千里さん)
落ち葉を見比べると種類が違えばもちろんのこと、同じ種類でさえも一つ一つ違う姿形をしています。またつるつるした落ち葉に、ちくちくした落ち葉、季節の花々のしっとりとした感触、さまざまな香り、コロコロと転がっていく丸いドングリ、虫たちの動く様子はもちろん、その大きさや質感など、実物だからこそ持っている情報があります。実物にふれあうことで、写真や絵本、お話や歌では得られない情報が、さまざまな感覚を通して届くのです。
自然が好きなあなただから、できること
(Photo : NPO法人 ひまわり Project Team)
私たちが取り組んでいる「季節の自然配達人」の活動は、打ち合わせはほとんどしていません。リーダー一人一人が「いまの自然」について、自分自身が見つけたもの、集められるもの、持ち寄れるものを伝えあい、それぞれに準備をしてきます。庭に草花が生えている仲間は野の花を、ハーブを育てている仲間はハーブを、無農薬の畑で作業する仲間は畑に集まるキアゲハの幼虫や飛んできたモンシロチョウを、さらに会場となる施設のすぐ近くの公園で虫たちを、そして季節のクラフトは得意なメンバーがそのときに提供できるものを用意しています。あとは当日にネイチャーゲームらしく「フローラーニング」を意識して、流れを大まかに決めて、いざ本番です。 ネイチャーゲームリーダーの仲間たちはもちろん、自然が好きな人たちは、日ごろから身近な自然にアンテナを張っていることと思います。そこにある見せたいもの、香りを楽しんでほしいもの、安全に触れる面白いものなど、届けたいものを準備すればOK。自然が好きなあなたにぜひ、こうした活動に関わっていただきたいと思いますし、また関係者の方々にはこうしたメンバーにお声掛けをいただければと思っています。
重い障害を持つ子どもたちと関わる上で
気をつけるべきこと
(Photo : NPO法人 ひまわり Project Team)
依頼をいただいた際には関係者の方々に、子どもたちと接する上での注意すべきことを必ず確認してください。私たちは大きく3つの点について気を付けています。
一つ目は一般イベントにも通じることです。大きな声が苦手な子どもがいたり、後ろから触れられるのが好きでない子どもがいたり、個別の配慮が必要な場合もあります。子どもたちを不安にさせないよう、あらかじめ情報を得ておきましょう。また逆に「好きなこと」「嬉しいこと」も聞いておけるとプログラムを組み立てたり、組み替えたりしやすくなります。
二点目が持ち込むものの消毒です。私たちの活動では虫かご、昆虫観察カップはすべて洗浄、消毒をした上で持ちこんでいます。その上で虫は直接触れないようにしています。また植物の落し物は、できるものは洗浄、消毒をし、水洗いや消毒が難しいものは日光消毒などをするようにしたり、きれいに持ち込めるよう配慮しています。消毒(アルコール消毒など)は、落ち葉の匂いなどが飛んでしまったり、変色してしまう場合もありますので、事前に確認をしておくことをおすすめします。
三つ目が健常の子どもたちと同様に接するということ。知的障害の有無は専門家でない私たちにはわかりません。重症児の子どもたちの反応が薄いことはやむを得ないことですが、反応として表すことが難しいだけかもしれません。そのため、こちらの話す言葉は理解されていると考えて話しかけています。「ひまわりHAUS」での活動においては、参加者ひとりひとりにご家族や介助者がいて、個別にフォローをしてくださいます。しかもフォローするだけでなく、子どもたちと一緒になって(あるいは率先して)、驚いたり、声をあげてくださり、その反応がまた子どもたちへの刺激となり一緒に喜んでくれます。そこには常時、わかちあいがあり、まさにシェアリングネイチャーと言える時間となっています。
だれ一人取り残さない
(Photo : NPO法人 ひまわり Project Team)
SDGs(持続可能な開発目標)は「だれ一人取り残さない」という考え方に基づいています。自然案内人である私たちネイチャーゲーム指導員が掲げてきた目標、「人が自然を尊重し共生していく社会」の創造と重なるものです。身近な自然の面白さや不思議を、あらゆる人たちが感じられる機会を作っていくことも、「だれ一人取り残さない」という考え方に通じています。この活動を通して、また一つ、私たちが作っていくべき社会の未来に向けて、出来ることを確認させていただきました。
ネイチャーゲーム指導員の方々はもちろん、多くの方に本活動が参考になれば幸いです。
参考
地域実践事例「重い障害をもった子どもたちへのシェアリングネイチャープログラム」(2013年)
ひまわり Project Team 重症心身障害児者の自立支援活動
ひまわりHAUS:20196-6:草木や生き物、初夏の自然を感じよう♪
藤田航平 ふじた こうへい
公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会
シェアリングネイチャー組織支援室
幼い頃、両親が関わる障害者支援の活動に参加。身近に障害を持つ方がいる環境で育ちました。その経験が今に生きていることに縁を感じています。
あっちゃん、いのっち、たかさん、よっしー、そして、ひまわりHAUSのみなさまに感謝。
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