野外活動主宰者・草木専門家・クラフト作家・家具職人・林業家・大工・保育士…いろいろな立場の人がスタッフとなって、地元の材料を使って展開している「中津川木育」も8年目。
今年は新型コロナの影響で各園これからの実施となりますが、昨年度の様子を紹介します。
苗木保育園年長児の参観日と合わせた親子での取り組みです。
この園での木育の取り組みは3年目。
去年まで
自分の兄・姉の様子や
年長児の姿を見てきている
「かりやどがわぐみ」
「むぎつきがわぐみ」
(このクラス名、素敵ですよね!
ちなみに年少組は「しろやま」「まるやま」、
年中組は「せんげやま」「たかみねやま」…
地域の山や川の名前から付けられています)
は親子そろって、
木育の日を楽しみにしてくれていたとのことで、
欠席者なし!
最初に皆で
わらべうたあそび
「ゆらりゆらりゆりのき」。
♪ゆらりゆらりゆりのき もんでもんでもみのき かしげかしげかしのき・・・くるめくるめくるみのき ほおのきでとんでいけ~♪
と、いろんな木の名前を歌いながら、
親子でふれあいました。
桜だったらどう?
と問いかけると、
といってくれた子がいて、
皆で作る「お箸」の材料・桜も入れて遊びました。
わらべうたの最後、
ホオノキ…~♪のところでは、
お友だちの親さんのところに移動するなど、
スタッフも入り混じって、
ワイワイと体も心もほぐれていきます。
最後は
自分のおとうさん・おかあさんのところへとんでいけ~♪
親子に戻って、
次の活動に移りました。
このわらべうたの活動では
親子や参加者がスキンシップを楽しみながら、
いろいろな木があることに気付き、
それぞれの木の特徴にも関心を寄せます。
つるつるつるつる(サルスベリやリョウブ)
のびてのびて(スギの木)
どすこいどすこい(ジョウモンスギ)…と、
参加者と一緒に木の種類を追加したり、
ホオノキでとんでいけ~♪
のところでは、
3人組・5人組とか、
クラスごとに分かれる…
といった応用も楽しんでいます。
いよいよ箸の製作です。
1日目の目標は「箸先の完成」。
子どもたちの口に
直接触れるところなので、
親さんに活躍してもらい、
形の仕上げまでを
目標に行いました。
材料のヤマザクラを手に取り、
まず、香りを嗅いでみました。
園児は思い思いの感想を
言ってくれました。
子どもの感じ方、
表現の仕方に大人はうなりました。
(スタッフがホワイトボードに
書き留めてシェア…)
親さんが箸先部分を、
園児は持ち手部分を、
ドレッサーやサンドペーパーを
使って削ります。
指先で感触を確かめながら
作業は続きます。
やする際に出る細かい粉にも
注目が集まります。
スタッフのひとり、
家具職人のヨッシーから、
この粉は家具つくりにも使うとの説明受けて、
さらに目が輝きます。
途中で水分補給や
トイレ休憩の声を掛けましたが、
早く続きをやりたがる園児の積極的な姿に、
大人は驚くばかりでした。
2日目は、園児だけでお箸仕上げ。
サンドペーパーも
だんだん目が細かくなります。
ペーパーのざらざら感を比べる子、
ヤマザクラの桃色がかった削り粉を集める子、
お箸の感触をほっぺで感じる子
(頬は粉でおしろいを付けたよう…)と、
興味の持ち方は人それぞれ…
目で見ただけでは
変化に気付きにくい箸づくり。
手ざわりや嗅覚もしっかり使って、
気長に仕上げていきます。
床に足を付け、
姿勢もしっかりしていないと
集中できません。
さあ、仕上げまでもう一歩。
だんだんと細かいサンドぺーパーで磨き、
「水研ぎ」=水と日の魔法!?
少し湿らし、乾くとあら不思議!
もう一度、#600くらいのサンドペーパーでそーっと磨いたら
世界にひとつのマイ箸。
焼きペンで名前を入れてから、
えごまオイルで拭き上げ、
完成!
1日目に親さんにお願いしていた、
三角に折った布と紐で
簡単にできる箸袋。
と、さっそく入れていました。
盛夏を避け、
少し涼しくなってから、
お箸の材料であった
「ヤマザクラ」の木に出会うために
散策に出かけました。
目的地は、
保育園から散歩に行ったり、
家族でお参りに行く、
園児にはなじみの神明神社。
途中小雨が降りだし、
参道のスギの大木の下で雨宿り。
かつて雷に打たれたらしいスギの木は大きく、
たくさんの種類の植物が同居しており、
スギとは違う植物を木の幹や枝に
見つけるたびに声が上がりました。
雨が止むまでもうひとあそび。
大木から地面に目を移すと、
たくさんの実が落ちています。
これなあんだ?
スタッフの広げた手にはスギの実。
(ネイチャーゲームの〈同じものをみつけよう〉という活動)
ひとり2個見つけたら教えてね。
見つけられない子には教えてあげて…
教えられるまでもなく、
あっという間にみんな見つけて
2個ずつ見つけたスギの実で
〈スギの実じゃんけん〉をしました。
【やり方】
(1) ひとり2個のスギの実を拾います。
(2) 相手を見つけてじゃんけんぽん。
(3) 負けた人は「どっち?」と両手のこぶしを勝った人の前に示します。
1個でも2個でも、
勝った人が指したほうに
スギの実が入っていたらもらえます。
でも、入ってなかったら残念。
もらえません。
(4) 相手を変えながらじゃんけんを繰り返します。
スギの実がなくなってもじゃんけんはできます。
負けても「どっちだ?」とすまして言います。
10分程、
じゃんけん遊びを楽しみました。
雨も上がって、
神社の境内へ移動。
ここでは〈フィールドビンゴ〉をしました。
【やり方】
(1)ビンゴカードに何が描かれている?
カードには「鳥の声」や「赤いもの」など
五感を使って自然の中で探し物をする項目
が書いてあります。
1枚ずつ配られた自分のビンゴカードを皆で確認します。
(2)4・5人ずつのグループに分かれて、
カードにある項目を見つけます。
グループのみんなが見つけられたら
項目に穴をあけます。
いくつ見つけられるかな。
においとか手ざわりは皆、感じ方が違うので、
そこも楽しみながら探してみましょう。
(3)あっという間に15~20分は過ぎてしまいます。
集まって、各グループの見つけたものを
教え合いました。
ところで、ヤマザクラは?
実は集合した場所のすぐそばに
ヤマサクラがあったのです。
それも、サカキ(神社ではよく見かけます)や
カシの木とくっつきあって…
目を閉じて、
ヤマザクラの気持ちを感じました。
ネイチャーゲーム〈わたしは山〉の
〈わたしはヤマザクラ〉バージョンです。
【やり方】
ヤマザクラになって
感じたことを心の中で言ってみよう・・・
高い木のてっぺんから何が見える?
・・・おともだちの木と一緒。
どんなお話しているのかな?
・・・風がふいてきた。鳥が留まった。
何が聞こえてる?
どんな気持ちがしている?
表現できそうなそうな質問事項を
用意してみると、
園児たちは目を閉じたまま、
静かな時間。
心の中で自分の思いを
つぶやいてくれていました。
ヤマザクラの命と自分の命。
ヤマザクラの命とお箸の命・・・
ひとりひとり、
感じる時間が持てました。
幼児でも、
こういう静かな活動も可能です。
帰路は雨もすっかり上がり、
道端の木にも自然と
関心を寄せていました。
ヨッシーが、
ヒノキやスギなどの針葉樹(針の木)と
広葉樹(ひらいた葉っぱの木)話をして、
皆で山に目をやると
と指さす園児たち。
山に囲まれた環境で
生活している園児の感性に、
またまた驚かされる大人たちでした。
木育を通して、
日々の生活と木とのつながり、
地域の歴史・文化・産業とのつながり、
親子(世代間)のつながりが
できていくことを願っています。
そして、将来的に木・樹(自然環境)と
結びついた行動・暮らしができる人となるために
段階的・継続的なステップの一歩として、
これからも幼児の木育活動に
ネイチャーゲームを取り入れ、
丁寧に関わっていこうと考えています。