この特集では指導員の皆さんにアンケートを取り、日々のネイチャーゲームで、「いつ・どんな場面で・どんな会話のとき困ったか」を聞きました。すると、見えてきたのは、伝えることの難しさと、さまざまな年齢の子どもたちに興味を持たせるにはどうしたらいいかという悩み。
回答には「プログラムの中盤、次のネイチャーゲームに移るときに、子どもからの『まだ、やるの?』という発言に困りました」「アクティビティに興味を持てず、つまらなさそうな態度とマイナス発言をする」など、ストレートに興味を持てない発言をする子どもの対応に困惑する声が多くあがりました。
皆さん、現場ではうまく声がけをして乗り切っていますが、内心はドキドキあたふたしているようです。年齢によっても違ってきますが、子どもと会話をするとき、どんな心構えを持っていると良いのでしょうか? アンケート回答を鈴木先生にも見ていただきながら、お聞きしました。
しかも、子どもはちょっとしたことで気持ちにゆれが出るもの。参加することをとても楽しみにしていたのに、途中で親に怒られ て、そのまま引きずってしまうこともありますしね。とくに小さな子どもは、いま、そのときの気持ちを最優先させてしまうんだな、と思っておくといいかもしれません
と鈴木先生。
たしかに、楽しそうに参加していたのに、最後に「今日はおもしろくなかった」という子がいたり……。そんなときは「すっごく楽しそうだったよ」と子どもに 伝えるそうのも 大切なポイントだと鈴木先生は いいます。
小学生低学年くらいまでの子どもは自分の気持ちが最優先。小学校中学年くらいになると斜に構える子、困らせる子はいるもの。これを前提として、さらにコミュニケーションをとりやすくするヒントは?
小学校3年生くらいになると、下の年齢の子の面倒を見たいという気持ちが出てくるんです。そして、実際落ち着きのない子にその役割をさせると、〝幸せホルモン〟といわれるオキシトシンという物質が出て、安定するそうです。異年齢の活動の場合、小学校中学年くらいの子と4~5歳の子を組ませる方法も有効でしょう。
そして、指導員の皆さんが常に心がけている〝受け身の姿勢〟にもポイントが。
実はこのときの子どもたちの言葉は、3種類に分けられます。黄色い花を見つけたという『事実(できごと)』・お花を見つけて嬉しいという<『感情(気持ち)』・レモンより黄色いなどの『思考(考えたこと)』──。
オウム返しするとき、この3つのうちどれを返しているかを意識すると、子どもの〝わかってもらえた!〟という気持ちがより深くなります
年齢ごとの大まかな特性を知ると、子どもへの理解が深まり、「なんでこういうことを言うの?」「なんでわかってもらえないの?」という戸惑いも少なくなります。
鈴木先生によると、小学校1~2年生くらいまでは、自分と他者の区別があまりついていないのだとか。「相手や周りのことを考えて行動しましょう」と言っても限界があるようです。
それを念頭に置きながら、〝自分が!〟の時期の子にはその子の気持ちを代弁してみましょう。そして〝わたしとあなた〟という2人の関係性を意識し始めるころの子には、指導員自身やほかの人の気持ちも言葉にすると、より伝わりやすくなるでしょう。
自己中心性が強く、他者の気持ちはわからない時期。自分が楽しかったら、ほかの人も楽しいと思っている。その子の気持ちを受け止める声がけをしつつ、ほかの人にも目を向けることを促す声がけが有効。
たとえば、自分の拾った葉っぱが気に入っている子には「この葉っぱ、お気に入りなんだね」と受け止め、「●●ちゃんは、違う葉っぱを見つけてるよね」「●●くんはまだ葉っぱ探しているね」とほかの子の様子をそれとなく伝えてみる。まだわからない時期でも、伝えることは大切。
そして、親と離れることに不安を抱きやすい時期でもあるので、できれば親と一緒に参加することが望ましい。
それまでの自己中心的な意識から成長して、ほかの人のしていることがわかるように。とはいえ、ほかの人の気持ちまではまだ想像が及ばない。たとえば「●●くんは、楽しんでいるね」「●●ちゃんが嫌がっているよ」と、ほかの人の気持ちを言葉にして教えてあげることが大切。
そして、5~6歳になると、保育園や幼稚園では「年長」として扱われるため、その自覚も出てくる。親と離れたくはないけれども、親の指示を受けたくないと思いはじめる時期。親子で参加している場合は、「子どものやることは、そばで見守ってあげてくださいね」のように、親に関わり方を伝えてみて。
小学校に入り、それまで年長者だった立場が今度は最年少に。そのため、少し幼くなる傾向があり、指導員が細かく見守る必要がある場合も。一方で、少しずつほかの人の気持ちがわかるようになる。
たとえば、自分はおもしろいけれど、ほかの人はおもしろいと思ってないというような、違う考え方があることもわかるように。それまでは、ほかの人の様子や気持ちを伝えることが必要だったが、自分で気づけるようになったので、人から「●●ちゃんが~!」と言われると、うるさく感じる。その子がほかの子のことを気づいたときに、「気づいたんだ、すごい!」と伝えるほうが大切。
小学3~4年生はなんでも自分でやりたい時期。親とは離れて、好きなようにやらせるのが望ましい。「なんでそんなことやるの?」「それ、おもしろいの?」などと、斜に構えた発言もするが、本当に興味を持ってのことなので、否定的にとらえずに説明すると納得することも。
また、「自分とほかの人」という二者の関係から、第三者の存在を意識し始める年代。自分と友だちが楽しそうにしているのを「楽しそうだったね」と言われるなどの経験を積み重ねて、〝まわりの人が見ているからきちんとしなくてはいけない〟〝まわりに迷惑をかけてはいけない〟という道徳的な気持ちが生まれてくる。
と鈴木先生。
そして、子ども自身が「こんな葉っぱを見つけてうれしかった」と言葉にすること、「見つけた!」「びっくりした!」とみんなとシェアすることによって、自分の喜びが表現できて、オキシトシンが放出されます。
「つまらない」というマイナス発言も「そっかぁ~、つまらないんだね。どんなところがつまらなね」としっかり受け止めると、本当は何がやりたいかを知るチャンスになるとも。
子どもの気持ちを先回りせずに受け身で待ち、わかちあう。ネイチャーゲームの基本に立ち戻ると、おのずと子どもとのコミュニケーションもうまくいくのかもしれません。
※情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.35 特集(取材・文:茂木奈穂子 編集:藤田航平・豊国光菜子、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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