以前まで赴任していた広島大学附属幼稚園では、週に1回「森の日」を設定して、森の中を保育室として活動してきました。そこでの体験を踏まえながら、幼児が自然に親しむ秘訣を教えちゃいます!
松本信吾
岐阜聖徳学園大学教育学部教授
1968年福岡県生まれ。保育者一筋20数年、愛称「シンゴリラ」として子どもたちに大人気の保育研究者。前任の広島大学附属幼稚園では、園を“森のようちえん”化して、森での保育を模索・実践し、現在に至る。
たとえばある「森の日」──不思議な葉っぱを見つけた子は、そのままス~っと自然の中に没頭し、まるで探究者のようです。そして子どもは発明家でもあるので、遊具がなくても自然のものを何かに見立てて遊ぶことが得意!落ちている木を集め、さっそく小人のお家が登場します。
また別の「森の日」では、ぐちゃぐちゃになって土や泥と格闘する子どもたち。じっと見つめるまなざしや、無邪気でこぼれんばかりの笑顔を見ていると、大人も幸せな気持ちになります。自然の中に浸り込む遊びは、人間にとってとてもいい時間だと感じます。
落ちている木、葉、花、草、土、砂、泥、風、雨など……。自然の良さは想像力が無限に広がるところです。子どもたちは自分ができることをわかっているので、大人が先回りして答えや方法を教えなくても、やり方を見つけて、いろんなものを作り始めます。
森では活動が制限されるのでは?と思いがちですが、木の楽器を作って音楽もできれば、自然物での造形表現もできる。秘密基地、木のベッド、葉っぱの傘……、その子らしい想像力が発揮できるのです。
園では栗が落ちていると、自分で拾ってきて食べる経験もします。そうすると子どもたちは、食事を再現してみたくなり、〝バーベキューごっこ〟に発展します。このように、生活と遊びがつながることは、幼児期にはとても大切なことです。
また自然には、不思議さ、美しさを感じる要素がたくさんあるので、遊ぶ中で「どうなるんだろう?」と疑問が湧いて、いろいろ試してみたくなります。この気づきや意欲こそ、子どもたちの学ぶ力の源。指導者はネイチャーゲームを通して、ぜひ子どもたちの驚き・発見・感動を分かち合ってください。
机上の遊びも楽しいものですが、その子らしさ、感性はなかなか現れにくいのかもしれません。その点、自然のものを使うと、感じたこと、工夫したことがそのまま表現されます。こうしてみると、まさに自然は〝大いなる教科書〟ともいえますね。
子どものネイチャーゲームでは、マニュアル通りの進行ではなく、子どもたちが入り込みやすいようにアレンジし、とくに言葉で説明するのが難しい幼児期であれば、動きで伝えるなどして十把ひとからげではなく、一人ひとりの子に寄りそいたいものです。
「おもしろいね!」「いい匂いがするね」と、自然への窓を一緒に開いていく。まさに「一緒に感じる」ことを大事にする。そんなネイチャーゲームの原点に返りながら、子どもたちには〝教える〟より〝共に感じる〟ことを意識して実践していきましょう。
※情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.33(編集:佐々木香織、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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