幼児教育・保育ネイチャーゲーム研究会
(社)日本ネイチャーゲーム協会指導者養成委員会の部会の1つ。幼児教育を専攻する大学・短大教員や幼稚園園長等で構成される。幼児教育・保育における自然体験活動についての実践や研究を行っている。
右:大竹節子 品川区二葉すこやか園園長
左:酒井幸子 母子愛育会愛育幼稚園園長
※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.68」(2010年3月15日発行)より転載しています。団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。
子どもの自然体験に対する関心は、2008年に改定された学習指導要綱で、新しい教育の方向性として「言葉の重視」とともに「体験の充実」が明記されたことにも後押しされ、多様な教育の現場でますます高まってきています。
これを受け、日本ネイチャーゲーム協会では2008年秋から『幼児教育・保育ネイチャーゲーム研究会』を立ち上げ、定期的な研究活動や実践を行っています。今回は研究会で中心的な役割を担うふたりの園長先生のお話を元に、体験者のご家族の話も交えて、子どもたちの自然体験にネイチャーゲームをとりいれることの効果とその意義を紐解いてみました。
「感動や悲しみ、慈しみなど、多様な感情を育てる」「好奇心や探究心の育成」「科学的な見方や考え方の芽生えを促す」など。子どものときに五感をフルに使って豊かな自然を体験することは、人間の健全な成長に欠くことができないものだといわれます。
しかし多忙化する社会の中で、教育の現場でも、家庭でも、大人が子どもに寄り添って自然の移ろいを感じる時間は、残念ながら近年大きく減少しているといわざるを得ません。
また、時間だけでなく、子どもの自然体験の質と量は、周囲の大人の「自然への興味・関心や感動体験、自然に関する基礎知識や技術の有無に大きく影響される」と懸念の声を挙げる教育関係者も少なくありません。すなわち、保育者や親自身の自然に関する力量が問われてしまうわけです。
そう語るのは、『幼児教育・保育ネイチャーゲーム研究会』のメンバーである東京・港区にある母子愛育会愛育幼稚園園長の酒井幸子先生です。
というのは、同じく研究会のメンバーである東京・品川区の二葉すこやか園園長の大竹節子先生。
それがネイチャーゲームの一番目の魅力だと、両園長は声を揃えて評価します。
ネイチャーゲームで、葉っぱの小さな穴から風景をのぞいて見たとき、虫眼鏡を使って草むらの観察をしたとき...。
酒井先生は、
と目を輝かせて語ります。
そこでふと思ったのは、子どもたちはこんな風にして自然と出会っているのではないかということ。
実際にやってみると、どんなに豊かな世界があるかが分かる。昔は自分も知っていたのに、大人になって頭が固くなり忘れていた世界にまた気づかされる。それがネイチャーゲームかもしれない、とは酒井先生。そうして大人が気づくと、子どもたちを見る目が変わる。子どもの世界が愉快に見える。その大人の変化は、子どもたちにとってはとても好ましいことだといいます。
周囲の大人の「共感」「受容」「分かち合い」は、幼児期には欠くことができないとても大切なことです。けれど社会が多忙化するなかで、保育者も親も
というのは大竹先生。ネイチャーゲームは、その"大切なこと"を日常に手軽に取りもどせる「ツール」になるかもしれないと、期待しています。
月に1回、杉並区の公園で開催される『大宮のもり自然教室』に、2年前から毎回のように参加し、ネイチャーゲームを家族で楽しんでいるのがサマディ萌子ちゃん(小3)のご家族。
とは、お母さんの朋子さん。朋子さんが、子どものときに庭の隅にあった畑で季節の移ろいを感じていたように。
自然体験を持たない大人は、自然体験をしない子どもを育ててしまいます。それがとても残念でならないという、朋子さんです。
一方、自然と出会う喜びを味わって楽しくて仕方なさそうなのが、酒井先生と大竹先生。
〈目かくし歩き〉で園庭のカイズカイブキの茂みの下にもぐりこんだ大竹先生は
とほほえみます。
そして、葉の裏に卵を産み、幼虫が葉を食べて成長するため、幼虫の軌跡がまるで絵を描いたようにみえる「字かき虫」を園児といっしょに探した酒井先生は、
と目を輝かせます。
自然と触れているとき、子どもはイキイキしています。公園を夢中で走り回る子どもの笑顔を見たら、「それだけでいい」と思えるという、酒井先生。
現在、『幼児教育・保育ネイチャーゲーム研究会』では、保育現場へのネイチャーゲームの導入効果に大きな期待を寄せ、保育士を対象とした指導員養成講座を開催しています。小・中学校のように教科にしばられることのない保育の現場での広がりが、今後どのような効果を見せるのか、楽しみな動きです。
取材・文/伊東久枝
取材協力/大竹節子 酒井幸子 サマディ朋子 川口真樹
写真提供/山口哲也 藤田航平
構 成/編集部
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