
私たちの身の回りには、美しく不思議な世界が広がっています。それは、森や海、山といった大きな自然だけでなく、家の玄関先や通勤途中の道端にも広がっているのかもしれません。
駅の入り口脇の小さな段差から、雑草が顔をのぞかせているのを見かけたことはありませんか?
この夏、その雑草が膝丈まで伸び、先には黄色い花が咲いているかもしれません。
そんな小さな花に、小さな枠をかざしてみます。まるで額縁に入った特別な絵画のように、自分だけの世界が浮かび上がってくるようです。手のひらに収まるその枠は、私たちを“とっておきの世界”へと誘ってくれるのです。
〈小さな美〉の遊び方
(1)5センチ四方程度のフレームを用意する。
(2)洗濯バサミやヒモなどを使い、小さな世界で心ひかれたものに、フレームをセットする。
(3)〈小さな美〉を鑑賞する。
※手のひらサイズほどの紙を用意して、フレームに囲まれた部分をスケッチするのもオススメ
子どもたちが日々過ごす園庭にも、たくさんの〈小さな美〉があります。でも、その多くは見逃されがちです。なぜなら、それは「とても小さい」から。
そこで、子どもたちと一緒に絵本『じっちょりんのあるくみち』を読んでみました。じっちょりんの家族が、小さな隙間にタネを植えてくれている――そんな物語です。そう思って見てみると、道のあちらこちらに、草花がひっそりと芽を出しているのに気づきます。
絵本は“読み聞かせる”のではなく、“一緒に読む”ことで、じっちょりんが自分のすぐそばにいるような気持ちになれるようにしました。
「いた!僕の足の下にタネがあった!」
「壁のところにじっちょりんがいた!」
「え?じっちょりんいた?」
「いたいた!じっちょりん、いたーーー!」
「アリもいた!」「もっと小さい何かがいた!」「こっちこっち、見て見て!」
小さな枠の中にその発見をおさめる子どももいれば、枠なんて気にせず、地面に這いつくばって観察を始める子どももいます。
そうして、子どもたちは“小さな小さな世界”に夢中になっていくのです。
はじめのうちは、「じっちょりん探し」だけで終わってしまうかもしれません。けれど、それでも十分にワクワクする体験です。そしてその体験の中で見つけた“何か”は、子どもにとって特別な存在となっていくはずです。
翌週には、そのことをすっかり忘れてしまうかもしれません。でも、季節がめぐり、時間が過ぎる中で、また自然は姿を変えながら私たちの目に映ります。そして子どもたちは、また発見するのです。
園庭でも、自宅のベランダでも、道路脇の側溝でも、自然はめぐり、繰り返し、美しさを届けてくれます。
それを知識としてではなく、心と身体で感じ取っているのだとしたら、きっとその“小さな世界”も、子どもたちにとってかけがえのない特別な存在になっていくことでしょう。
【参考】
『じっちょりんのあるくみち』
作:かとう あじゅ 発行:株式会社文渓堂
(2025.09.24記事作成)
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峯岸由美子 みねぎし ゆみこ
ネイチャーゲームトレーナー
一般社団法人遊心 代表理事
上野公園や都立公園などの都市部の公園や街中での生活につながる身近な自然でのシェアリングネイチャー活動をしています。特に0歳~3歳を対象とした親子自然遊び、未就学児~の探求型プログラムを得意とし、自然に不慣れな方でも心地よく、ネイチャーゲームがもつ「自然への気づき」を体験できるように心がけています。
ネイチャーゲーム入門講座、リスクマネジメント講習など活動に必要な学習も実践中。
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