珍樹ハンター
小山 直彦(こやま なおひこ)さん
15年以上、森や公園などで動物や人などに似ている珍しい樹木を探す「珍樹ハンター」として活動している。これまでに「これは!」と撮影した珍樹は約2500点。珍樹ハントの魅力を広めるため、「珍樹アニマル探偵団」「樹木のそっくりさんフォトコンテスト」など公園と共同したイベントを多数開催。著書に『珍樹図鑑』(文春新書)。公式サイトは「珍樹の森コレクション」。
ここに並んだのは小山さんがハントした、とっておきの珍樹の数々。さすがハンター、本当にこれが樹木なのと驚いてしまうほどのそっくりぶり。なるほど、木の皮の模様や枝のしなり具合をこう見るのか~と感心してしまいます。
とはいえ、
というご意見があるかもしれません。
と小山さん。
空に浮かぶ雲をくじらに見立て、子どもたちが背中に乗って空中飛行を楽しむ…なんて物語がありました。「珍樹ハント」は木の幹や枝、樹皮に現れる模様や形から、何かに見立てられる“珍”しい“樹”木(珍樹)を、探して(ハント)名前をつける遊び。
樹木に詳しくなくてもノープロブレム! 必要なものは見立てるための“観察力”と“想像力” だけ。年齢・性別問わず、近所の公園や校庭など、屋外で楽しめる身近なアウトドアの遊びなんです。
珍樹ハントは・・・ネイチャーゲームと親和性がある
動物、芸能人、キャラクター、車や道具…どんなものに見立ててもよく、同じ木でも人によって例えるものは千差万別。珍樹ハントには正解がありません。自由に、自分の思うままに感覚を働かせていいのです。そして、家族や友人と何に見立てたかシェアすると、異なる見方を知って、楽しみも倍増。
また、珍樹探しのために、自然の中で木々をじっと観察していると、自然の力強さや同じ形が一つとしてない不思議さ、おもしろさが感じられます。どうですか?ネイチャーゲームと通じるものがあると思いませんか?
珍樹ハントする人・・・すなわち珍樹ハンター!
約15年前にこの珍樹ハントを考案し、各地の公園などでイベント活動を続けているのが「珍樹ハンター」こと小山直彦さん。普段はフリーランスで広告制作の仕事をする一方、日々公園に“ハント”に出かけているのだとか。「最近はスマートフォンのカメラの性能が高く、珍樹を発見したら気軽に撮影できるようになりました。珍樹との出会いは一期一会『。これは〇〇に見えるな…』と思ったら、スマートフォンに収めてみるといいですよ」。一期一会の気持ちで木に向き合うことが珍樹ハンターには大切なようです。
珍樹ハンターをハントする!
編集部は、小山さんがハントに出かけると聞きつけ、珍樹ハンターをハントすべく、東京都立川市と昭島市にまたがる国営昭和記念公園に向かうことに。一緒に園内を歩きながら、珍樹ハンティングをすると、見つけ方のコツやポイントがいっぱい! 次ページでハンターの心得を余すところなく伝授しているので、迷わずGO!
珍樹発見の糸口は、動物や人間など、正面から見た顔の形に見えるような逆三角形の3つの穴や節。初心者は手始めに、3つの点を探してみましょう。もし穴が1つしか見つからなかったら、それを目にして横顔にならないか想像してみましょう。
瞬間的に「似ている!」と思っても、じっくり見ているうちに違うものに見えてくることも。また、角度によっても見え方が変わるので、真正面からだけではなく、上から下から、斜めから…といろんな角度から眺めてみることもポイント。ちょっと怪しまれそうですが、堂々と!
肉眼ではぼんやりとしか見立てられない樹木もスマートフォンやデジタルカメラで気になる部分を撮影。その画像を逆さまや横向きに回転させたり、ぐんとズームして寄ってみたりすると、それまで気がつかなかった発見が!珍樹との出会いは一期一会。少しでも気になったら、写真に収めることが大切。
初めのうちは木の幹の3つの穴や、枝のしなり具合や形などから似ているものをイメージしていきますが、慣れてきたら、根っこも観察してみましょう。陸の動物だけでなく、海や川に住む生きものなどに見立てられることも。
木も私たち人間と同じように、1本1本違い、生きていて、成長します。幹が太くなったり、木肌が変化したりするので、月日が経つと印象が変わります。近所で珍樹を見つけたら、ぜひ友だちになって長く付き合ってみて。
変化を感じ、観察がさらにおもしろくなります。
山や森よりも公園や街路樹のほうが、珍樹が現れやすい傾向が。剪定されたあとがおもしろい形を生み出しやすく、また多様な木が植えられているのも、その理由。そして、ハントは通年できますが、おすすめは冬。葉が落ちて幹や枝がよく見え、珍樹率が上がります。
たくさんの樹木に出会えば出会っただけ、珍樹の発見率は高まります。時間的な余裕も必要ですが、なにより心にゆとりがあることが大切。体調が悪かったり、心が疲れていたりすると想像力も高まりません。見慣れた樹木の中に、見立てがひらめくということは、心も体も脳もいい状態ということです。
実際にハントに出かける前に、イマジネーションを膨らませる練習をしてみましょう。右側に並んだ10枚の珍樹。さて、何に見立てているのか、左側の10枚の中から選んでみてください。そのまま素直に見てもいいし、左右上下に回転させて見てもOK。家族や友人と一緒に試してみるのも楽しいかもしれません。
※情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.35 特集(取材・文:茂木奈穂子 編集:佐々木香織、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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