静かに、「私は」という言葉を繰り返しましょう。「私は」を言うたびに、自然の中であなたの心を捉える何かを探します。(空に浮かぶ雲だったり、森の中で音楽を奏でる風だったり)そして、それが何であれ、その生きた現実をあなたの心の中に感じてみましょう。しばしの間、それを楽しんだら、あなたが眺めていたものを表すシンプルな言葉をささやいてみましょう。
例えば「私は・・・・・・漂う雲」「私は・・・・・・波打つ枝」「私は・・・・・・湖を吹き抜ける風の爽快さ」というふうに。 5分間程度これを繰り返したらリラックスし、あなたの中の、そしてあなたを取り巻く自然の静寂を楽しみましょう。目に映るすべてのものと交わる感覚を感じてください。
ひとりが促し役になり、もうひとりは受け手になります。促し役は、受け手の視界を遮らないようにやや後方に座りましょう。促し役が「私は」と言葉を繰り返すことによって、受け手は"今"に集中することができ、今この瞬間に没頭することができます。友人と共にこの活動を行うことは、自然との交わり、友人との交わりを共有する感覚を作り上げてくれます。必要に応じて役割を変えてください。
私は、趣味で全国各地の一の宮(その土地のナンバーワンの神社)を巡っています。雰囲気のよい森や山があるところでは、座ったり横になったりすると、肩の力が抜け、楽になってゆきます。
そういう時、1本の木が目に入ったとします。呼吸を整え、木に意識が惹ひかれていくと、「私は木だ」と感じる時があります。そのまま自分が木になった気持ちでいると、枝先や葉っぱに意識が移ります。すると「私は枝だ」と思うのです。枝になった気分は楽しく、葉を茂らせ、陽が照れば葉の栄養を受け取り、風が吹けばリズムを取って揺られています。不意に私は「風」になります。風になって山の上を駆け上がり、町や村に降りてゆきます。その繰り返しのなか、意識は「私は雲、自由自在に動く」と感じます。私は雲になって、雨を降らせ、地面にしみ通り、根から樹木に入り込むのです。
そのように、次々と「私」は姿を変え、集中がとぎれたところで、あるいは続かなくなったところでおしまい。立ってその木にあいさつし、次の地へ移動します。
このアクティビティは〈私は山〉です。20周年清里大会でジョセフ・コーネルさんに教わりました。私は1人でもできるネイチャーゲームが好きで、しかも道具がいらないので、ときどきやっています。仕事帰りや空いた時間に、職場のクスノキを見上げたり、芝生を見つめたり。調子のいい日は次々と自分が何かに変わっていきます。
また、朝起きて1日の始まりに〈私は山〉を行なうこともあります。体を伸ばしベランダに座ると、前方に徳島市のシンボル、眉山が見えます。「何が見える? 山」「何が聞こえる? カラスの鳴き声」「何を感じる? 肌に当たる風の涼しさ」というように、感覚をとぎすます方法もあります。私の集中力は5分程度。集中力が保てなくなれば、あっさり切り上げるのもコツです。
「暮らしのなかにネイチャーゲームを」と思っていれば、仕事や家事の合間にできることもあります。
(村上宜輝/徳島県)
※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.73」(2011年3月15日発行)より転載しています。
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