【やり方】
(1) 自分が気に入った場所を見つけて腰を下ろします。
(2) キョロキョロしたりふりかえったりしないで、じっと動かずに自分の気配を消してまわりの自然の一部になりきります。
(3) まわりで起こることを静かに観察します。
行きつけの森の中、茂みに腰を下ろして自分の気配を消していたら、すぐ近くまで鳥がやってきた。鳥たちの動きを静かに見つめて、鳥の声に耳を澄ませてみる・・・鳥たちの会話がわかるような気がしてきた。
竹林整備のひととき、クワを持ったまま竹林の一部になりきる・・・まわりから聞こえてくる音や気配を静かに感じる。私が受信モードになったとたんに、自然からのメッセージがたくさんキャッチできる。
近所の公園。人が集まる広場や遊具から離れて静かな木立の中に入ってみた。気に入った場所で木に寄りかかり、あぐらをかいてリラックス。自分と自然の波長を合わせるようにほんのわずかな時間を過ごした。
私の職場である「グリーンスポーツみなまた」では、春の大事な作業の一つに竹林整備があります。ここは海辺の照葉樹の森の中にあるキャンプ場ですが、竹林もあるのです。これは昔、漁師さんたちが漁の道具の材料を自給するため、竹を植えたのがはじまりだとか。しかし、漁具の素材がプラスチックに取って代わられた現在、使われなくなった竹はキャンプ場や森の中にどんどん入り込む厄介者になってしまったのです。そこで、毎年3月から5月にかけては、森に侵入する竹を小さいうちに駆除する竹林整備が日課となっています。
その作業の途中、毎日のように行なっているのが<狩人の訓練>です。森の中で作業をしていると、何かの気配を感じることがあります。そのような時はクワを持ったまま一瞬で木になって、その気配に耳を澄まします。じっと動かず、息もそっと抑えて森の一部になっていると、やがてコゲラやヤマガラが頭上の木の枝にやってきたり、目の前でアオゲラが大きな音を立ててドラミングを始めたりするのです。
鳥や獣の気配だけでなく、竹がこすれあって「キュウキュウ」と鳴く音、人の背丈より大きくなったタケノコの先端にたまった夜露が、ポタリ、ポタリと、まるで雨のように根元の草をぬらす音、皮が落ちた直後の若竹のモグラの毛並みのように柔らかな感触、竹の切り株で発酵した雨水が虫を呼び寄せる甘酸っぱいにおいなど、竹林に満ちているいのちの不思議さに出会うこともできます。
森の中にそっと佇んでいると、自分のからだからも根っこが伸びて、木や竹の根っこと絡み合い、鳥や虫、獣たちともつながっていくような感覚を覚えます。そして、仕事の合間の短い時間でも<狩人の訓練>を続けていれば、森でいのちをつないでいた遠い時代の祖先たちの後ろ姿も、いつか垣間見ることができるような気がしています。
(小里アリサ/熊本)
※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.70」(2010年6月15日発行)より転載しています。
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