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ライフスタイル
自然を守る活動、そして私たちにできること
世界最大級の自然保護団体WWF(世界自然保護基金)の日本事務所の活動についてお聞きしました。
キーワードは生物多様性。 人と自然、地球のために いま私たちがするべきことは?

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.64」(2008年12月15日発行)より転載しています。団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。

昨年閣議決定された「第三次生物多様性国家戦略」では、今後5年間に取り組むべき施策として『生物多様性を社会に浸透させる』『地域における人と自然の関係を再構築する』『森・里・川・海のつながりを確保する』『地球規模の視野を持って行動する』などの基本戦略が提示されました。そのような状況の中、本誌でも地球に生きる全ての生物と自分との関わりや人と自然のつながりを見つめ直したいと思います。そこで今回は、世界最大級の自然保護団体WWF(世界自然保護基金)の日本事務所の活動についてお聞きしました。

50カ国以上の拠点をもち100を超える国々で活動を展開
生物多様性とは、自然界の生命の豊かさを包括的に表した概念で、人間が生存していくために不可欠な生存基盤です。その反面、人間の営みが拡大するにしたがって生物多様性は損なわれつつあり、地球環境問題の一つとなっています。そこで、生物多様性条約に基づく国際的な取り組みが進められ、日本でも生物多様性国家戦略の策定を受けて総合的な取り組みがなされるようになりました。今回ご紹介するWWFは、かねてより生物多様性の観点に立ち、絶滅が危惧される動物保護や環境保全活動に取り組んできた世界最大級の自然保護団体です。WWFジャパンの小森繁樹さんの説明によると、WWFは、絶滅の危機にある野生生物の保護を目的としてスイスで1961年に設立されたNGOで、現在はWWFインターナショナルを中心に、50カ国以上の国々に拠点を置き、100を超える国々で地球規模の活動を展開しているそうです。そして、WWFジャパンにおいても、住民、専門家、行政、産業界など様々な分野の人々とともに、科学的根拠に基づいた現状分析と将来予測を行ない、具体的で現実的な策を提案し、具体的に誰が、どう行動し、何を変えていけばいいのかを考え、実現させるための幅広い活動を行っています。小森さんはWWFのミッションについてこう語ります。

WWFでは、世界の生物多様性を守る、再生可能な自然資源の持続可能な利用が確実に行なわれるようにする、環境汚染と浪費的な消費の削減を進める、という3つのミッションに基づいてさまざまな活動を行っています。ミッションを達成する上で特に重要なのが、エコロジカル・フットプリントです。これをいかに減らしていくか、それが私たちの緊急の課題です
地球の生産力をはるかに超えた エコロジカル・フットプリント
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エコロジカル・フットプリントとは、人間が地球環境に及ぼす影響の大きさの指標です。木材などを生産している森林や魚介類などをもたらす海洋、農場、牧草地といった、現在人類が消費している物を生み出し、また、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素を吸収するのに必要な土地を、架空の面積(グローバルヘクタール)に換算したものです。WWFが、ロンドン動物園協会およびグローバル・フットプリント・ネットワークと共に制作した『LivingPlanet Report:生きている地球レポート』の2008年版によると、世界のエコロジカル・フットプリントは、1980年代の半ばに地球1個分の生物生産力(及び二酸化炭素の吸収力)のラインを超え、2005年の時点でおよそ1.3の数値を示しています。これを見ると、私たち人類がいかに地球の生産力を超えた「使いすぎ」状態にあるかが一目瞭然です。


これは、100万円の収入しかないのに、130万円も使い続けている家庭のようなものです。もし、私たちの需要がこのまま伸びていくとしたら、2030年代の半ばまでには地球が2個分いるようになると予測されています

と小森さん。

最新の2008年版『生きている地球レポート』は、現在日本語に翻訳中だそうですが、このレポートでは、生物多様性の劣化を示す「LPI:Living Planet Index(生きている地球指数)」も示されています。この地球指数は、1970年時点と比較して世界平均で30%近く減少。熱帯の指数は50%も低下しているそうで、熱帯林の伐採や開発、土地利用のあり方が大きな影響を及ぼしていることが明らかになっています。つまり、わずか40年も経たない間に、人類は地球の自然環境を3割も悪化させ、地球1個分の資源を超えた消費生活を送っているのが現在の私たちの姿だということです。とりわけ、エコロジカル・フットプリントの中で高い割合を占めているのが、二酸化炭素の排出量の増加です。

1961年の時点では、世界全体のフットプリントの1割強に過ぎなかった二酸化炭素の排出は、2005年には全体の約半分を占めるまでに急増しました。このことからも、二酸化炭素の排出削減による地球温暖化の防止が人類にとっていかに大きな緊急の課題であるかわかります。この状態を、2050年までにいかに1961年以前の半分の状態にまで減らせるかというのが、私たちの大きな目標です
地球温暖化防止のために 私たちにできることとは?

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(森林の環境を破壊することなく、木材や紙製品を手に入れることはできないだろうか? 環境、社会、経済に配慮したFSCの森林認証制度は、そんな要望に応える国際的な仕組み。)




では、そのために私たちができることは何でしょうか? 

小森さんと自然保護室の新井秀子さんはこう答えてくれました。

一人ひとりが毎日の食事を見直したり、こまめに節電をするだけでも効果があります。また、電化製品を買い換えるときには省エネ商品にしたり、環境に配慮されたFSC(継続可能な管理がなされている森林を認証する制度)やMSC(持続可能な管理がなされている漁業を認証する制度)などのエコラベルのついた商品を購入する、あるいは代替エネルギーの利用や技術開発も大事だと思います(小森さん)


 

それと、地球温暖化を止めるために、中長期的な削減目標を定めて温室効果ガスを確実に減らすためのルール作りを求めるMAKE the RULEキャンペーンが行われています。これは私たちも実行委員を務めている活動の一つですが、誰でも署名用紙に署名していただけるもので、パソコンや携帯からも賛同メッセージが送れます。また、具体的な政策提案としては、京都議定書の削減目標を達成するためにまとめられた、『脱炭素社会と排出量取引(日本評論社)』という本がとても参考になるのでお薦めです(新井さん)


WWFジャパンではFSCやMSC認証制度の日本での立上げや、普及に努め、通販『パンダショップ』でも、他の環境に配慮した商品と共にFSCとMSCの商品を取り扱っています。このような商品を購入することや、自然を守る活動を行う団体を支援すること、また地域の活動に参加することもりっぱな環境保全の取り組みです。

小森さんと新井さんは、ネイチャーゲームについて、

自然の中で癒されたり、レイチェル・カーソンのいう"センス・オブ・ワンダー"(神秘さや不思議さに目を見はる感性)が養われるのは、とても大事な活動ですね

と評価し、お二人共興味を持ってくれたようです。シェアリングネイチャーの6原則にある「理想を目指して実践しよう」は、WWFの活動に通じるものであり、「自然のためだけではなく、自然とともに生きよう」という理念から導かれるシンプルな生き方は、エコロジカル・フットプリントを減らすライフスタイルの見直しにもつながります。その意味で、人と自然をつなぐインタープリターとしての私たちの役割もまた大きいといえるでしょう。


取材・文/小笠原英晃
取材協力/WWFジャパン 小森繁樹・新井秀子
写真提供/WWFジャパン
構  成/編集部


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