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活躍する"学生"ネイチャーゲームリーダー
日本協会では、大学や専門学校でネイチャーゲームリーダーの資格が取れる「課程認定校」という制度を導入しています。就職後も職場でネイチャーゲームを活用している卒業生の事例に、指導に当たる大学教授、県協会理事の話をまじえ、課程認定校の"今"をご紹介します。
学生リーダー2700人! 課程認定校の実績と躍進に向けての課題

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.78」(2012年6月15日発行)より転載しています。団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。

大学や専門学校でネイチャーゲームリーダーの資格が取れる制度を導入して今年で10年を迎えます。現在ネイチャーゲームリーダー養成講座を開講する学校は約20校、すでにリーダー資格を取得した学生は2700人を超えました。学生時代にリーダー資格を取得することのメリットにはどのようなことがあるのか。認定校開始10年の節目に、就職後も職場でネイチャーゲームを活用している卒業生の事例に、指導に当たる大学教授、県協会理事の話をまじえ、課程認定校の"今"をご紹介します。

ネイチャーゲーム課程認定校

ネイチャーゲームリーダー養成講座を「授業」や「集中講座」で組み入れた大学や短大、専門学校。平成13年度から延べ35の学校が課程認定校として講座を行っている。

養成講座で知る 自然の魅力と学びの可能性

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大学や短大、専門学校のネイチャーゲーム課程認定校では、現在授業として年間プログラムを組んでいる学校と、集中講座として夏休みなどにリーダー養成講座を開催している学校があります。受講生の多くを占めるのは保育士や教員を目指す学生。卒業後職場ですぐに使える技術として身につける人が多いようです。資格として履歴書に明記できることから、就職活動に有利に働くというメリットもあげられます。


さらに課程認定校の現場の話をうかがうと、学生時代にネイチャーゲームリーダーを取得することには、「技術」や「資格」の枠にとどまらないさまざまなメリットがあるように思われます。


今年4月に北海道教育大学岩見沢校を卒業し、野外活動プログラムなどの企画・運営を行う『ゆうばり自然体験塾』に就職した多々見ゆりかさんは、大学の授業で野外活動を体験するまで「屋外でゲームをするという発想すらなかった」学生でした。進学でアウトドア・ライフ専攻を選んだのも

高校まで陸上競技に没頭していたほど運動が好きだったので、この学部がいいかな

と思った程度。それが大学で子どもキャンプの企画やスタッフ体験を重ねるごとに自然の魅力に取りつかれ、入学当初漠然と「就職は教員」と思っていたものが、就職活動時には子どもキャンプや修学旅行生を対象とした野外活動の企画・運営を行う企業を選ぶほどになっていました。

自然のなかでの学びはひとりひとり違い、必ずしも答えがあるものではない。だからこそ得られるおもしろさや楽しさを伝えたいと思い、カリキュラムなどの縛りがなく自由にプログラムを考えられる今の仕事を選びました。瞬間瞬間によって見え方、感じ方が違う自然。同じ場所でも見る度に異なるものを見せてくれる奥深さ。そのような魅力をひとりでも多くの人に伝えたいと思います


「答があるものが少ない」ということは、間違いも少ないということ。だから子どもたちも、自分の発見や学びを発表しやすい。そうして自分の気づきを人に伝えることで、表現力が身に付いていく。さらに自然のなかではひとりではできないことも多いので、仲間と協力する力もついていくのだと、自然体験活動における学びの広がりを話す多々見さん。

多々見さんと話をしていると、大学を卒業して就職をしたばかりの新人スタッフとは思えないしっかりとした考えと話し方に驚きます。それを伝えると、

私自身、指導体験を重ねるなかで発言する力がついたように思います

と話します。

彼女の言葉の端ばしから、好奇心とするどい感性をもった大学生が自然とそれを伝える体験活動の魅力に引き込まれ、さまざまな活動のなかで成長していった姿がいきいきと伝わってくるようです。

自然体験が少ない人でも伝えられる「技術」の取得

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じつは、多々見さんはネイチャーゲームインストラクターの資格を在学中に取得しています。これは日本協会としても、数少ない課程認定校受講学生による学生インストラクターの誕生でした。


動機は『学生時代に取得できるものはひとつでも多く挑戦してみよう』という程度だったんですが、ネイチャーゲームのイベントスタッフをするなど、インストラクター取得のための経験を積むにつれ、自然体験活動の持つ魅力がより深く理解できたように思います


リーダー養成講座を受講したころは、単に楽しいゲームだと思っていた〈カモフラージュ〉や〈コウモリとガ〉にそれぞれ伝えられる学習内容.たとえば、虫が鳥などに食べられないために身につけた"保護色"や"擬態"の体験~があることを理解し、「もっと自然の仕組みが知りたい、伝えたい」と思うようになりました。指導体験の積み重ねのなかで、彼女自身がネイチャーゲームの本質を理解し、自然体験活動の意義を認識していったといえるでしょう。

おもしろさに加えて、新たな自然の仕組みを発見できたら、家に帰って子どもたちが家族に話すネタになる。そうすれば親子のコミュニケーションの機会にもなる・・・そんなことも考えるようになりました。そして、スタッフとして参加する社会人の方がみんな勉強熱心で、子どもたちに何かを伝えたいという目的を持っていることが素敵だな・・・と感じました


もちろん大学の授業ではネイチャーゲーム以外にも多くの自然活動を体験します。では、そのなかで今多々見さんにとってネイチャーゲームの指導技術はどのような意味を持っているのでしょうか。

もしネイチャーゲームの指導技術がなかったら、自然の素晴らしさや魅力をいくら知っても、大学入学まで自然とほとんど関わってこなかった私には虫取りなどの簡単な遊びしかできず、人に伝える術がなかったと思います
資格取得後の学生に指導体験の場を!

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体験活動の指導方法は座学だけでは身に付きません。ネイチャーゲームのリーダー資格を取得すると、大学のサークル活動はもとより、フォローアップセミナーや地域の会の活動などに参加する機会に恵まれ、指導経験を積むチャンスができます

「意欲的な人にとっては道が開ける」と語るのは、多々見さんの指導教員であった北海道教育大学岩見沢校の能條歩教授。教育大学という性格上、卒業生には教員になる人もおり、授業で活用しているという話も聞かれます。また、最近では自然ガイドになる卒業生も増えています。ところが・・・

大学入学当時は自然の魅力を知らない学生もいます。しかし自然の魅力は、指導者本人が自然とのふれあいを楽しいと思っていないと人には伝えられない。ですからまずは、学生自身が体験してみることが大切なのです。さらにリーダー養成講座では、人に伝えるためには技術があるということも学べます


学生時代のネイチャーゲーム体験は「体験活動指導の体験」だと、能條先生はいいます。

一方、学生にそのような指導の場を学外で積極的に提供しているのが、静岡県ネイチャーゲーム協会理事長の藤田庄治さんです。2007年から企業との協働事業として、サッポロビール株式会社静岡工場が所有するビオトープ園を利用して幼児親子を対象に行っているネイチャーゲーム10回講座に、学生リーダーを迎えています。

プログラムを手伝うのは、藤田さんが非常勤講師を務める常葉学園短期大学保育科の学生の他、県内の課程認定校でリーダー資格を取得した学生たち。

非常勤講師は学内でサークルを立ち上げられないので、企業と地域の会の力を借りて学生が体験できる場をつくっています。保育士や教師という職業は、他の業種と違って見習い期間がなく、就職したとたんに自分でクラスをもたなくてはならない。そのときすぐに提供できる技術を持っていることは、大きな力になるはずです


これは、幼稚園教諭を25年間勤めた藤田さんが、現場体験がないまま担任になり、子どもたちを前に提供できるものがなく困惑している若い先生たちを見ていて感じたことからはじめた場の提供でした。

さらに今年からは、より学生が参加しやすいように、藤田さんが非常勤講師を勤める県内の保育園でも学生の受け入れをはじめました。

短期大学は授業数も多く、学生が忙しいためなかなか学外の活動に参加する余裕がないのが、当面の課題です。機会を増やすことで少しでも参加がしやすくなればいいと思っています(藤田さん)


さまざまなことに興味をもち、世界が広がる大学・専門学校時代。リーダー資格を取得したあともネイチャーゲームの活動に参加する学生は、まだまだ多いとはいえません。しかしその現状を「もったいない」というのが多々見さん。

インストラクター資格を取るか取らないかに関わらず、ネイチャーゲームには指導体験を行う機会がたくさんあるので、チャレンジするのがいいと思います。学生時代に、体験活動の指導が自分に合っているかどうかわかるだけでもいいですよね

と。

日本協会では、多々見さんのような若いリーダーが今後もより多くの現場で活躍することを願い、課程認定校の取り組みを進めていく予定です。

取材・文/伊東久枝
取材協力・写真提供/多々見ゆりか 能條歩 藤田庄治
写真提供/日本協会
構  成/編集部



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