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東日本大震災 自然体験活動指導者が今できること
2011年3月に発生した東日本大震災。被災地支援の現場から、ネイチャーゲームにできることを考えました。
このたびの地震で被災されたみなさまには 心からのお見舞いを申し上げます。

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.74」(2011年6月15日発行)より転載しています。団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、東日本を中心に甚大なる被害をもたらしました。

日本ネイチャーゲーム協会では、3月13日に自然災害対策委員会を立ち上げ、ホームページに東日本大震災専用ページを設け、会員のみなさまと情報の共有を行っております。そのほか、全国で自然体験活動を行う団体や個人が集まり支援活動を行う『RQ市民災害救援センター』の活動に連動した動きなども含め、今後も長期的な支援を行っていく予定です。ネイチャーゲームの活動で培ったスキルを活用し、会員のみなさまとともに、今それぞれができることを考えていきたいと思っております。

 日本ネイチャーゲーム協会 理事長・服部道夫

自然体験活動を行う全国ネットワークで 生まれた『RQ市民活動救援センター』

日本協会ではこれまで、1995年の阪神淡路大震災および2007年の新潟中越大震災発生時、それぞれに『自然災害対策委員会』を立ち上げ、独自に支援活動を行ってきました。しかしこのたびの東日本大震災では、独自の支援活動は行わず3月13日に発足した『RQ市民活動救援センター』に連動した活動を行っていくことにいたしました。

『RQ市民活動救援センター』(以後RQ)は、日本ネイチャーゲーム協会の理事でもある三好直子が世話人(理事)を務めるNPO法人日本エコツーリズムセンターが中心となり、おもに全国で自然学校などの野外活動や環境教育、地域づくりをしている団体や個人が集まって、東日本大震災の救援・復興支援活動を行うためにつくられた活動体です。現在では東京本部と宮城県登米市の現地本部のほか、宮城県の被災地内に6箇所の拠点を設け、公的支援が行き届きにくい数世帯が非難しているような小規模な避難所を中心に活動を行っています。また同じく自然体験活動を行っている団体が中心となり展開している岩手県と福島県の活動とも連携し、広範囲に渡るきめ細やかな支援を展開しています。


RQでは、義援物資や支援金の募集の他、ボランティアの統括を行っており、個人でもグループでも参加が可能。期間も1日から長期まで受け入れています。とくに中長期滞在が可能なボランティアコーディネートができる人材は常に不足状態。ぜひ積極的に参加をして、ネイチャーゲームの活動のなかで培ったコーディネート力を発揮してください。


RQの詳しい活動内容は『RQ市民活動救援センター』のホームページ
http://www.rq-center.net/で確認できます。

被災地で生きるネイチャーゲーム活動で培ったスキル

現在被災地で求められている復興支援活動には、瓦礫の撤去や泥かきなどの力仕事だけでなく、子どもの遊び相手、お年寄りの話し相手などさまざまです。そしてそのどれもが、被災された方の立場に立ち、それぞれの方が必要としているサポートをすることが求められています。

ネイチャーゲームのリーダーは、相手の話に耳を傾けて聞くのが得意ですよね。瓦礫撤去の仕事でも、作業をしながら話を聞き、被災者の方の気持ちをやわらげる助けができるのではないかと思います



そう話すのは、被災地での支援活動にも参加をしている三好直子さん。三好さん自身、現地ボランティアの間で「聞き上手の三好さん」と評判でした。

被災地では、必ずしもネイチャーゲームを実施できるとは限りません。3月下旬から2週間、学生とともに岩手県北東部の沿岸にある野田村でボランティア活動をしてきた北海道教育大学岩見沢校の能條歩先生(スポーツ教育課程アウトドアライフ専攻、日本協会指導者養成委員)もネイチャーゲームの活動はほんの一部だったといいます。子どもの遊び相手をする場合でも

ネイチャーゲームを実施するというより、子どもの状況を見て希望する活動をいっしょにすることを第一にしたほうがいい

と助言。ただし、どんな活動をしていてもネイチャーゲーム指導員の5つのルールは役に立ったそうです。とくに「受身でいよう」「教えるよりもわかちあおう」などの姿勢が効果を発し、学生たちも自分の考えを押し付けることなく子どもたちの状況や要望に合わせて活動ができました。

さらに、ボランティアの心構えとして能條先生は、

被災地ではいろいろと心を動かされることが多いものです。けれど子どもに対応しているときに、こちらが動揺をしてはいけません。落ち着いて、安心感を与えられるように振舞えるといいですね

と話します。

遊びは、サッカーや缶けりなどの「発散する遊び」と、カードゲームや手芸など「集中する遊び」を準備していくのがお勧め。今回は缶けりとミサンガづくりが大人気だったそうです。

集団で遊べて会話もできるような活動が、心理的ケアの面からも効果があるように思います(能條さん)

そして、自然災害の救援活動においてはネイチャーゲームのスキルだけでなく、野外活動の知識や技術も大変役立ちます。

能條先生が支援活動に行く前に学生に指示した装備は「バックカントリーキャンプや縦走登山を参考に個人装備を準備してください」というもの。それにマスク、防塵ゴーグルなど支援活動で必要と思われるものをいくつか追加しただけ。それでも、メンバーの多くが女子学生だったにもかかわらず、携帯トイレで難なく過ごせ、被災地に負荷をかけない「ゼロミッション・ボランティア」が実施できました。

また医療体制が十分ではない被災地では小さなけがも普段より大きな問題になりかねないため、『危険予知トレーニング』で得た知識も役立ちます。能條先生の活動でも、学生自ら、安全に遊べる場所を確保して活動ができたと評価しています。

被災地に行かなくてもできる活動を!
被災地に行きたくても、さまざまな事情で被災地に行かれない人は多いものです。しかし、

現地に行かなくても、身近で心痛めている人に寄り添い、"癒し"と"脅威"の両面を持つ自然と人をつなぐ活動をすることも大切だと思います
とは能條先生。そのような活動から災害に対する理解と備えがうまれ、新たな災害時に悲劇を生まずにすめば、それも自然体験活動の目指す到達点の一つだといいます。

日本協会では、支援活動の一貫として、被災地以外でできる活動を会員のみなさんと考え、実施例を紹介する場を今後設けていきたいと思っています。活動の様子をぜひご報告ください。

取材・文/伊東久枝
取材協力/RQ市民災害救援センター 北海道教育大学岩見沢校 能條 歩
写真提供/能條 歩 RQ市民災害救援センター
構  成/編集部

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