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ライフスタイル
特集:元気のソムリエ"みかぽん"と森へ行く(SNL 41号/2023年12月号)
森林セルフケアコーディネーターとして活動している、みかぽんこと赤居実花さん。
人と自然、心と体の繋がりを学び続け、さまざまな手法で心と体を元気にするサポートをしています。
自らを〝元気のソムリエ〟と称する赤居さん。
森林セルフケアって?元気のソムリエってどういうこと?
一緒に森を歩きながら、教えてもらいました。
せかさず、そっと、自然との距離を近づけてくれる

森林セルフケアコーディネーター
元気のソムリエ
赤居実花さん

日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー、森林療法セルフケアコーディネーター、ホメオパス、シェアリングネイチャーウェルネスガイド。ネイチャーゲームとの出会いをきっかけに、森林療法、心理学、ホメオパシーをはじめさまざまな自然療法を学び、自然のでナチュラルに心と体を元気にする案内役として活動。



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ときどき通る車をよけながら、ほんの少し脇に入ったところで、

じゃあ、ここから森に入りますね。ここはちょっと登りますけど、あとはゆっくり歩けますから


そう赤居さんが案内してくれたのは、森林セルフケアを行う森の入口。目の前に続く杉林は薄暗く、スーッとさしこむ木漏れ日がより一層明るく感じられます。

そこから歩みを進めていくと、人の手が加えられていない樹齢500年以上の杉が。佇まいを眺めるだけでも十分印象に残りますが、触ったり、見上げたりして、木と触れ合うお手本を見せてくれる赤居さん。木と思い思いの時間を過ごしてから、さらに先へと進んでいきます。赤居さんと歩いていると、

あれ? カケスの鳴き声かな?



ほら、こんなところにキノコ~


目に留まった植物、花、葉、枝、実、根、虫、足跡、匂いや感触、聞こえてくる風の音、鳥の鳴き声、水のせせらぎなどに、そのつど歩みは止まり、ちょっとした鑑賞会に。

ほんの数歩の間にも、足元や見上げた先に、自分ひとりでは意識できなかった、たくさんの命と自然の賑わいに気づかされます。こうした自然との距離を縮める誘(いざな)いは、ネイチャーゲームにはじめて出会ったときの感動が原点だと言います。

もともと自然は好きでしたけど『この植物の名前、種類はなんですか?』って言われても、私は『覚えられません!』だったんです(笑)。ネイチャーゲームは違いますね。自然の中のザラザラしたものを探そうとか、こんな形を探そうとか、知識ではない。『なんか、わからんけど、おもしろそう!』って受けたリーダー養成講座で〝ハマ〟りました。
森林セルフケアの流れでも、ネイチャーゲームのフローラーニングをとても大事にしています。ついさっき車や電車で着いて、いきなり『さあ、自然を感じましょう』『木にハグしてみましょう』と言われても、すぐにやるのは難しくないですか?自然を五感で感じるきっかけとなるネイチャーゲームのカードを使ったり、なにか見える?聞こえる?なんて問いかけたりして、楽しみながら少しずつ自然に慣れてもらっています
導きに身をまかせ、自然に溶け込んでゆく

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しばらくして、お互いの枝が触れるか触れないかくらいに木々が立つ平坦な場所に。赤居さんオリジナルの森林セルフケアが始まります。ここまでの道のりで、自然を感じるウォーミングアップは済んでいます。始めは自分の好きな木を探し、その木に触れてエネルギーを感じる樹林気功。木に背を向けて、頭のてっぺんにある百会(ひゃくえ)というツボを木に押しつけて反り返り、もたれかかります。

大地のエネルギーを足の裏から、木のエネルギーを百会からもらって、自分の体を通して巡らせるイメージです


赤居さんの静かでやさしい声かけに合わせて体をゆだねると、雄大な自然の懐に迎え入れられ、温かな平穏を感じます。

今度は地面に寝転んであお向けに。

体の力を抜いてみてください。でもね、本当は力が抜けてないんですよ。ぎゅ~っと思い切り力を入れてみてください。で、パッと力を抜く。この状態です



呼吸もね、意外と浅いんですよ。ゆっくり3秒吸ってみましょう。吸ったら2秒息を止めて、15秒かけてゆっくり吐いてみましょう


赤居さんの導きに身をまかせていくと、全身がリラックスします。体を包む木々のざわめき、遠くに映る青い空と漂う雲、だれにも邪魔されない自然との時間です。しばらくの静寂のあと、聞こえてきたのは音叉(おんさ)の響き。透き通った音が、風と一緒に木々の合間を抜けていきます。

どれほどの時間が過ぎたでしょうか。「そうだ、取材だった……」とゆっくり起き上がろうとしても、自然に溶け込んでしまった体はすぐには動かすことができません。そんな様子に、

参加したみなさん、『このまま帰りたくない!』って言われます」
と赤居さんはほほえみます。
癒やしの時間の中で 自分の体に目を向ける

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今回体験した森林セルフケアのアクティビティはほんの一部。参加者の心と体の状態によって、自然療法に基づいたハーブティーのティータイム、絵本の朗読、シンギングボウル、傾聴、対話なども盛り込まれます。どれもアプローチは違えども、心身に働きかけるセラピーです。

ネイチャーゲームを体験した大人が元気になって帰っていくのを見て『なんでやろ?』と思い始めてから、心と体の仕組みと自然との繋がりを知りたくて、森林療法、心理学、ホメオパシーを学びました。興味があることを調べていくと、別の方法で同じようなことを学んでいる人や情報に出会う。またそれにも興味が湧くんです。たとえばキネシオロジーという筋肉の反射で不調の原因を探る方法を学んでいる人から『大丈夫と言っていても、体は大丈夫じゃないことが〝筋肉〟でわかるんだよ』なんて聞くと『ちょっと、どういうこと、それ~?』って(笑)



学べば学ぶほど、どのセラピーも根本は繋がっていることがわかり、その中で、心と体どちらも整える必要性を考えてもらうために、わかりやすい手法を取り入れています。

たとえば五行音叉(ごぎょうおんさ)は、音の周波数を利用して、響きで心や体のサインを調べ、陰陽五行の考えに基づいて調整していくものです。『今日は腎に対応している音が鳴りにくいですけど、腎臓大丈夫ですか?』なんて具合に。すると、実は手術しましたとか、そういえばちょっと調子悪いんです、と返ってくることもあるんです。私は医者ではないので本当のところはわからないですけど(笑)、最近ゆっくり休めてなかったかな、疲れてるのかな、と自分の体に意識を向けてもらうきっかけにもなりますよね。

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すべてのものを、木・火・土・金・水の五つに分類する陰陽五行。臓器や感情も五つに分けられ、その関係性にあてはめて、ヒーリング効果をもたらす五行音叉。

森にいるだけで自分らしくいられる

森の中では、心の疲れや自分を縛っている思考にも気づきやすくなる、と赤居さん。

平気と思っていても本当は大丈夫じゃないってことに気づけない人が多い。みんな一生懸命で、知らず知らずのうちに力が入っています。でも自然に身を置くと、ポロポロ糸口が出てきます。心が緩むんでしょう

赤居さん自身も、固定観念に縛られて心にたくさんプロテクターをつけていたと言います。さまざまなセラピーを学び、体験していく中で一つひとつ外れていき、ありのままの自分でいることの清々しさ、豊かさを感じ取ったそうです。そして、だれにでもできて、ありのままの自分になれる方法は〝自然にいること〟という結論にたどり着きました。

それは人が自然な生きものだからだと思うんです。森にいてるだけで、木が、土が、みんな力を貸してくれて、元気にしてくれるんです
自分を”元気”にする術をもっと知ってほしい

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赤居さんが森林セルフケアで目指していることは、みんなに〝元気になってもらうこと。

健康っていうと、検査の数値がいいとか、病気にならないとか、そういうイメージが強いんです。もちろんそれも大事ですけど、病名がついていたり数値が悪かったりしても、自分の体のことがわかっていて、元気に生きている人っていらっしゃるじゃないですか。だから私、心と体を健康にではなく、心と体を〝元気に〟って伝えています


もう一つ目指しているのは、自分でもナチュラルに心と体を整える方法を知ってもらうこと。

森林セルフケアに来ていただくと『心と体ってこう繋がってるのね』『自然に元気になるにはどうしたらいいの?』みたいに、自分で考えるきっかけができると思うんです。たとえば、寝ても疲れが取れないわーっていうときに、どうするかですよね。お医者さんに行くのか、元気になるドリンクを飲むのか、それとも休むのか……。もっと深く向き合うと、しんどい原因って忙しいだけじゃなく、すごいストレスがかかってることがあるのかも?ってわかるようになる。さて、どうしよう?というときに自然に触れてみようとか、ちょっと外に行って深呼吸してみようとか、森林セルフケアで伝えたことを取り入れてもらうことで、少し元気を取り戻せる。そうやって、日々の中で、まず自分の自己治癒力を信じて整えてもらえるといいなって思います



赤居さんは今なお、心と体を癒す新たな学びを続けています。

私の中ではどれも繋がっていて、面白いから学びたい。やりたいこともいっぱい!でも一時期、たくさんカードを持っているのに、どうやって使えばいいかわからないような状態で悩んだんですよ。対話のメソッドを学ぶメンバーに相談したら『赤居さんて〝元気のソムリエ〟なんだね』って言われて。そのときはピンとこなかったけど、最近じわじわとそうかもしれないな~なんて感じています



季節、天気によって自然の姿は異なります。参加者も違えば、心と体のありようもさまざま。その人に合った森に案内して、その人に合ったセラピーを施して元気になってもらう──〝元気のソムリエ〟はぴったりの肩書きです。

そのときにしか出会えない自然の中で自分に合ったセラピーを受けられるなんて、とても贅沢!赤居さんの豊富なリストから繰り広げられる癒しのワザを受けてみたくなりませんか?

気がつけば、まわりはすっかり落ち着いた茜色の景色。あわてて帰りのバスの時間を調べました。次は仕事じゃなくて、ゆっくり〝元気のソムリエ〟に会いに来たいな、そう思いながら、バス停へ走るのでした。


情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.41 特集(取材・文:茂木奈穂子 編集:藤田航平・豊国光菜子、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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