人と自然、心と体の繋がりを学び続け、さまざまな手法で心と体を元気にするサポートをしています。
自らを〝元気のソムリエ〟と称する赤居さん。
森林セルフケアって?元気のソムリエってどういうこと?
一緒に森を歩きながら、教えてもらいました。
ときどき通る車をよけながら、ほんの少し脇に入ったところで、
そう赤居さんが案内してくれたのは、森林セルフケアを行う森の入口。目の前に続く杉林は薄暗く、スーッとさしこむ木漏れ日がより一層明るく感じられます。
そこから歩みを進めていくと、人の手が加えられていない樹齢500年以上の杉が。佇まいを眺めるだけでも十分印象に残りますが、触ったり、見上げたりして、木と触れ合うお手本を見せてくれる赤居さん。木と思い思いの時間を過ごしてから、さらに先へと進んでいきます。赤居さんと歩いていると、
目に留まった植物、花、葉、枝、実、根、虫、足跡、匂いや感触、聞こえてくる風の音、鳥の鳴き声、水のせせらぎなどに、そのつど歩みは止まり、ちょっとした鑑賞会に。
ほんの数歩の間にも、足元や見上げた先に、自分ひとりでは意識できなかった、たくさんの命と自然の賑わいに気づかされます。こうした自然との距離を縮める誘(いざな)いは、ネイチャーゲームにはじめて出会ったときの感動が原点だと言います。
森林セルフケアの流れでも、ネイチャーゲームのフローラーニングをとても大事にしています。ついさっき車や電車で着いて、いきなり『さあ、自然を感じましょう』『木にハグしてみましょう』と言われても、すぐにやるのは難しくないですか?自然を五感で感じるきっかけとなるネイチャーゲームのカードを使ったり、なにか見える?聞こえる?なんて問いかけたりして、楽しみながら少しずつ自然に慣れてもらっています
しばらくして、お互いの枝が触れるか触れないかくらいに木々が立つ平坦な場所に。赤居さんオリジナルの森林セルフケアが始まります。ここまでの道のりで、自然を感じるウォーミングアップは済んでいます。始めは自分の好きな木を探し、その木に触れてエネルギーを感じる樹林気功。木に背を向けて、頭のてっぺんにある百会(ひゃくえ)というツボを木に押しつけて反り返り、もたれかかります。
赤居さんの静かでやさしい声かけに合わせて体をゆだねると、雄大な自然の懐に迎え入れられ、温かな平穏を感じます。
今度は地面に寝転んであお向けに。
赤居さんの導きに身をまかせていくと、全身がリラックスします。体を包む木々のざわめき、遠くに映る青い空と漂う雲、だれにも邪魔されない自然との時間です。しばらくの静寂のあと、聞こえてきたのは音叉(おんさ)の響き。透き通った音が、風と一緒に木々の合間を抜けていきます。
どれほどの時間が過ぎたでしょうか。「そうだ、取材だった……」とゆっくり起き上がろうとしても、自然に溶け込んでしまった体はすぐには動かすことができません。そんな様子に、
と赤居さんはほほえみます。
今回体験した森林セルフケアのアクティビティはほんの一部。参加者の心と体の状態によって、自然療法に基づいたハーブティーのティータイム、絵本の朗読、シンギングボウル、傾聴、対話なども盛り込まれます。どれもアプローチは違えども、心身に働きかけるセラピーです。
学べば学ぶほど、どのセラピーも根本は繋がっていることがわかり、その中で、心と体どちらも整える必要性を考えてもらうために、わかりやすい手法を取り入れています。
すべてのものを、木・火・土・金・水の五つに分類する陰陽五行。臓器や感情も五つに分けられ、その関係性にあてはめて、ヒーリング効果をもたらす五行音叉。
森の中では、心の疲れや自分を縛っている思考にも気づきやすくなる、と赤居さん。
赤居さん自身も、固定観念に縛られて心にたくさんプロテクターをつけていたと言います。さまざまなセラピーを学び、体験していく中で一つひとつ外れていき、ありのままの自分でいることの清々しさ、豊かさを感じ取ったそうです。そして、だれにでもできて、ありのままの自分になれる方法は〝自然にいること〟という結論にたどり着きました。
赤居さんが森林セルフケアで目指していることは、みんなに〝元気になってもらうこと。
もう一つ目指しているのは、自分でもナチュラルに心と体を整える方法を知ってもらうこと。
赤居さんは今なお、心と体を癒す新たな学びを続けています。
季節、天気によって自然の姿は異なります。参加者も違えば、心と体のありようもさまざま。その人に合った森に案内して、その人に合ったセラピーを施して元気になってもらう──〝元気のソムリエ〟はぴったりの肩書きです。
そのときにしか出会えない自然の中で自分に合ったセラピーを受けられるなんて、とても贅沢!赤居さんの豊富なリストから繰り広げられる癒しのワザを受けてみたくなりませんか?
気がつけば、まわりはすっかり落ち着いた茜色の景色。あわてて帰りのバスの時間を調べました。次は仕事じゃなくて、ゆっくり〝元気のソムリエ〟に会いに来たいな、そう思いながら、バス停へ走るのでした。
※情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.41 特集(取材・文:茂木奈穂子 編集:藤田航平・豊国光菜子、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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