もやさんこと、故・宮本雅行さんが、いつものようにネイチャーゲームの仲間たちを、休暇村、網張温泉の近くの夜の森へと連れ出しました。いつもネイチャーゲームは「実践する」側で、なかなか「体験する」機会のない面々が一列に並び、嬉しそうに、でも、静かに、もやさんに続いて夜の森へと入っていきます。
そんな中に私もいて、細い山道に沿って続く木々の間、もやさんの指示した場所に、腰を下ろしました。
さわさわと吹く風、
カサリと落ち葉の落ちる音、
そして小さな生きものたちのかすかな息遣いを感じながら、
一人、夜の森を感じました。
20分くらいたったでしょうか、もやさんと仲間たちがやってきました。
仲間たちの列の一番後につき、そして後に続く仲間を拾いながら、みんなで一緒に山道をゆっくりと、そしてやっぱり静かに下っていきました。
夜の森では、昼に見た生きものたちは寝静まり、夜行性の生きものたちが歩き、鳴き、羽ばたいています。
夜は、明るい時間よりもいっそう、私たちが「生きものたちの世界にお邪魔させてもらっている」という印象が強くなる時間です。
だから、大切にしたいのはこの2つ。
・騒がないこと
・必要以上に明るくしないこと
生きものたちの暮らしの邪魔をしないよう、そっと森に入っていきましょう。
そして、私たち人間側も一人ずつ過ごせるよう、工夫することが大切です。
たとえばこんな手順。
〈夜は友だち〉
(2)リーダーが先頭で、1列になって夜の森に入っていく
(3)1人ずつ座って過ごす場所を指定していく。 となりの人の気配を感じられないくらい距離をとる
(4)1人ずつ動かずに、静かに森を感じる(10?50分くらい)
(5)リーダーが1人ずつ拾いながら来た道を戻る
もやさんが残してくれた文章にこんな一節があります。
ずっと昔、電気がなかった頃、もっともっと昔、ろうそくもなかった頃、人間は「灯りに頼らず夜を生きる術」をきっと持っていたのではないでしょうか?
20年ほど前、中国の、まだ電気も十分に供給されていなかった地域の農家にファームステイをさせてもらったことがあります。
夜、オンドルの上で隣で寝ていた小学生の男の子に蹴飛ばされ(笑)、目を覚ましたとき「本当の暗闇」を体験しました。
一切の光がないときでした。
記憶を頼りに手探りで外に出たとき夜空にまたたく星々に圧倒されるともに、星々の微かな光が、ぼんやりとですが、視界に自由をくれたことにホッとしたことを覚えています。
とは言え、やはり夜の森は暗く、不安になる子どももいます。
そこで、もやさんはこうも言っています。
自然は友だち。
この気持を大切にしながら、夜の森を楽しみましょう。
夜の森は危険もいっぱいです。 いつも以上に「見えない」のはもちろんですが、毒をもったヘビをはじめ危険な生きものがいる場所・季節では注意が必要です。事前に情報を集めましょう。
【夜の森で気をつけること】
・森に入る前に人数確認をして、戻ってきてからも人数を確認してください
・地理的な危険箇所を確認し避けること(崖など)
・危険な植物がないか明るいうちに確認を
・危険な生きものがいないか地元の人に聞いておきましょう
・一人では怖い!という子どもは家族と一緒に座るなど工夫しましょう
・つらい修行のようなことにならないよう、わくわくする気持ちを作ってから活動に入りましょう。無理をすると「夜の森は怖い」という印象が残ってしまいます。
・夜の明るさに目がなれた子どもは、走り出します。明るい夜であっても、走るのはさすがに危険なので気をつけましょう。
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公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会
事務局次長・マーケティング部
学生時代からネイチャーゲーム自然学校・自然教室に関わり、あれよあれよという間にネイチャーゲーム漬けの日々(つまり仕事)。もやさんが亡くなり、仲間たちと集まった夜には「夜とも」海岸バージョンに参加。だんだんと潮が満ちてきて、帰り道がなくならないかヒヤヒヤしたのも、よい思い出。