としくらえみ
東京生まれ。幼稚園勤務ののち、1987年から数回にわたりドイツやスイスに渡り、シュタイナー幼稚園での実習を行うほか、水彩画や芸術療法(アートセラピー)を学ぶ。現在、京都にてぬらし絵やクラフトを教えるアトリエ・キンダー・ライムを主宰。2児の母。
※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.79」(2012年9月15日発行)より転載しています。団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。
ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した『シュタイナー教育』は、「自分で感じ・考え・行動できる人を育てる教育」として、日本でも幼児教育を中心に根強い支持を受け、静かに広まってきています。近年ではシュタイナーの教育理論を取り入れた幼稚園や小学校もあり、多様な書籍も発行され、多くの人に知られるようになりました。
今号では、そのシュタイナー教育の実践者・としくらえみさんにご協力いただき、7月21日に浜松で行われたネイチャーゲームとのコラボレーションプログラムの様子をご紹介します。
全体がしっとりとなるまでぬらした画用紙に、平筆で水彩絵の具を置くと、みるみるにじんでふわーっと色が広がっていきます。そこにまた別の色を置くと、絵の具と絵の具が混ざりあって新たな色が生まれてくる。そんな様子に子どもたちは夢中になり、次つぎに思い思いの色を画用紙にのせていきます。直線、曲線、そして大小さまざまな水玉模様...。用いる色は、赤・黄・青の三原色のみです。しかし画用紙の上には、それらの色が出会って無限の色が広がっていきます。
そう話すのは、今回シュタイナーの代表的なアクティビティ『ぬらし絵』の指導をしてくださったとしくらえみさん。
参加者は、3歳から小学5年生まで16名。それらの子どもたちが、ひとりで、またグループで、年齢に関係なく夢中で画用紙に向かっていました。参加者のなかには「普段落ち着きのある子ではないのに、集中して真剣に絵を描いていたのにびっくり」とお母さんを驚かせた子もいました。
そしてできあがった絵を見ると、ぬらし絵を行う前に見た自然の風景をイメージさせる絵がたくさん!
この日のプログラムは、最初に屋外でネイチャーゲームのアクティビティ〈フィールドビンゴ〉(*1)と〈カメラゲーム〉(*2)を行い、その後室内に移動して、としくらさんの指導で『ぬらし絵』を行うというもの。そのため子どもたちの頭のなかには、会場となった佐さ鳴なる湖こ(静岡県浜松市)の自然が鮮明に焼きついていたのでしょう。湖を思わせるブルー、湖畔の緑、咲いていた花々の表情がイキイキと表れていました。まだ言葉では体験をしっかりと伝えられない小さな子どもたちが、このように自然を見ていたのか・・・と、まるで子どもたちの心が画用紙の上に飛び出てきたようでした。
青と黄色を混ぜたら緑になるということを知っている子はたくさんいます。でも色の混ざり方によって同じ緑でもさまざまな色があることを、知識だけでなく体験として知っていること、「感覚で知ることが大切」なのだと話すとしくらさん。だからシュタイナーのプログラムはできあがりではなく、過程が大切だといいます。ネイチャーゲームの理念と、どこか重なるものを感じます。
*1 フィールドビンゴ:カードに書かれた「いい匂い」「星のかたち」などを、五感を使って自然のなかから探し出すアクティビティ。
*2 カメラゲーム:体験者自身がカメラになり、目をつむったまま案内された場所で、カメラのファインダーを開くように一瞬目を開き、自然の風景を頭に焼き付けるアクティビティ。
この日のプログラムには、ネイチャーゲームのリーダーやインストラクターが数名視察に来ていました。プログラムを見学したリーダーの1人、長野の公立保育園園長、原礼子さんは
といいます。また、インストラクターの早川広美さんは
と、まずは自分自身がやってみたいと、意欲満々で帰って行きました。
今回のイベントを企画したのは、遠州ネイチャーゲームの会にも所属する山本真樹さんです。じつはドイツ玩具の輸入販売の仕事をしており、シュタイナー教育には昔から造詣が深いリーダー。
すでに保育園、幼稚園、音楽や絵画、料理教室など、幅広い分野でネイチャーゲームの年間指導を行っている山本さんは、今後はシュタイナー教育とネイチャーゲームを合わせた指導者育成なども行いたいといいます。どのような広がりを見せるか、とても楽しみな取り組みのひとつです。
取材・文/伊東久枝
取材協力/としくらえみ/山本真樹/原 礼子/早川広美
写真提供/日本協会
構 成/編集部
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