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小中学生の自然体験
私は誰...?〈私は誰でしょう〉で楽しく学ぶ「動物の生態」
教育の現場において「体験したことあるよね?の前提」が崩れて(?)久しい今日この頃。幼少期の外遊びをはじめ、暮らしの中にある自然との関わりからの「体験」の多様性が下がってきています。そんなときだからこそ、〈私は誰でしょう〉を紹介します!
体験と学習を結ぶ大切さ

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最近のテレビ番組ではよく「養蜂」が取り上げられるますね。



日本シェアリングネイチャー協会の近くにある大学の屋上でも、

某アイドルグループのみなさんが養蜂に取り組んでいます。

私が非常勤講師をさせてもらっている東京農工大学でも、

その番組の撮影があったりして、いつかすれ違うんじゃないかと

ワクワクしています。おっと話が逸れました。


ミツバチ1匹が、その短い一生をかけて集めるハチミツは、

ティースプーン1杯分といわれています。

では、そのハチミツの原料となっているものは何かというと、

現代の子どもたちの多くは、花の蜜だと知っています。


では花の蜜の甘さを知っている子どもは

一体どのくらいいるでしょうか?


4年ほど前、コロナが始まる前のこと。

桜並木を歩いていると、食事していたヒヨドリが

短いサクラの枝を落としてくれたことがあります。

その枝には桜の花がいくつか残っていて、

当時5歳だった息子と、サクラの花の蜜を吸いました。


サクラの花の蜜の味は濃厚で香りも強く、

とてもおいしかったことを鮮明に覚えています。


その味に感動した息子と私は、

桜並木の下を通るときはいつも、

ヒヨドリが来ないかと期待しながら見上げています。


ところで、その花の蜜の量ですが、

ほんの「ちょびっと」です。

この「ちょびっと」を、

ミツバチは一生懸命集めているのです。


あの甘さを知っているから、

ミツバチが訪れる花の数に思いをはせ、

それが途方もないことだと気がつきます。


体験があるからこそ、

「ティースプーン1杯のハチミツ」から

感じ取れることが変わり、

花を訪れるミツバチの見方が変わっていきます。


もちろん学習が先で、後から花の蜜を味わってもOKで、

体験と学習の両立があってこそ深まる気づきがあります。

――

※花に毒性のある植物もあるので注意が必要です。

厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html

――

ダンゴムシを知らない子はいない?!

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花の蜜の味を知っている子どもの割合はきっと低い。

教育の現場ではなかなか手を出せないところですから

ここは「家庭」のがんばり所ですね。

安全なものを確認してぜひトライしてみてほしいところです。


では、子どもたちは生きものについて

全然知らないかというと、そんなことはないですよね。


アリやクモを見たことがない子もそうはいません。

セミはそこら中で鳴いているし、

チョウもトンボも飛んできます。

蚊に刺されたことがない子どもはほとんどいないかと。


幼児期の子どもたちは、

ダンゴムシが大好きで、

躊躇なく触っていますよね。

小学生になったら差が出てくるのですが


もちろんイヌ、ネコ、カラス、スズメ、カエルにトカゲ・・・

身近なところに哺乳類も鳥類も両生類も爬虫類も、

もちろん節足動物もいて

きっと子どもたちは会っています。


花の蜜は確かに難しい。

でも、動物たちとのその出会いはありますから、

それを学習に活かせたら

スムーズですし、楽しいですよね。

〈私は誰でしょう〉で学ぶ意欲を高める

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そこで紹介したいのが、〈私は誰でしょう〉です。



数あるネイチャーゲームの「動物」に関わる活動の中でも

この活動は汎用性と、わかりやすさ、さらに

学習への展開もしやすいことで人気の活動です。


〈私は誰でしょう〉

※まずは先生がデモンストレーションをかねて挑戦しましょう

1)児童に協力してもらい、先生にだけわからないように

生きものカードを一枚選んでもらって

先生の背中に洗濯バサミで止めてもらいます


(2)児童に背中のカードを見せます。

そのとき、児童が「うっかり」生きものの名前を言わないように

先に児童に伝えておきましょう。

(1年生は「うっかり」が多発しがちです。 それを想定してカードを多めに用意しておくと◯)


3)児童に問いかけることで、協力してもらって

背中のカードの生きものについて情報を集めます


(4)何の生きものかわかったら

「私は◯◯ですか?」といったように聞きます


(5)正解したら、今度は
希望する児童と交代しましょう


ポイントは2つです。


1)子どもたちが実際に見たことがありそうな動物を選ぶこと

 暮らしの中や動物園などで出会ったことがある動物がベターです。

 あまり親しみのない動物だと、学習と体験を結びつけづらいためです。

2)質問の項目と学習を結びつけること

「足の数」や「空を飛びますか」といった問いかけで、

動物の体の作りについての学習につなげられます。

また慣れてくれば、

先生が子どもの背中に

「国語の授業に出てくる動物」のカードを付けたりして、

学習への流れを作ることもできます。

また、「みんなは会ったことがありますか?」や

「学校にもいますか?」といった問いかけは、

その動物と自分の出会いや関わりを

ふりかえるきっかけになり、おすすめです。

先生からの問いかけに自分の知っていることを確認しながら、

先生が正解にたどり着けるよう、みんなで協力していく・・・

この全員で答えにたどりつくという「勝ち負けがない中」で、

楽しみながら「動物」の生態について考えれるのが、この活動の魅力の一つです。


また、自分は知らない情報があったり、

逆に自分だけが知っている情報があったりして、

「へ〜」と思う瞬間や、

「周りに情報を伝える」といった経験にもなります。

「へ〜」はもちろん、先生が正解にたどりつけるよう協力した成功体験はきっとプラスに動きます。〈私は誰でしょう〉に挑戦したいと思ったり、動物についてもっと知りたいと思うきっかけになります。


この意欲をさあどう学習にもっていくか、先生の腕の見せどころですね。

気をつけたい「迷宮入り」

しかし、上記の1のところにこだわって動物を選定しておかないと・・・

子どもたちが問いかけに答えられず、

先生は「正解」にたどり着けなくなる可能性が高まります。


特に生態が似通っている動物がいて、

子どもたちが実際に会ったことがない場合は要注意です。


案外ひっかかるのなと感じるのが、クマとタヌキ。

マニアックすぎる「ため糞をしますか?」といった質問は

この活動には向いていません。

そのため、タヌキの体の大きさや、

クマは木登りが得意な仲間がいることなどを

押さえておきたいところです。



こうした「似ている部分もあるけど、違う」ことが

生態についての学習になるわけですから、

学びへとつなげられるように準備しておきたいですね。


私が過去に陥った「迷宮入り」は、

「アブラゼミの触覚は「ツノ」かどうか?」でした。

「ツノがありますか?」と聞いて「はい」だったので、

カブトムシかと思ったら、違うと言われてしまい・・・

ウンウン悩んだ末、

「樹液の飲み方」を聞いて、正解にたどり着きました。



つい先日の実践では、

・体の大きさは?・・・・いろいろ

・体の色は?・・・・いろいろ

・住んでいるところは?・・・いろいろ

と「いろいろ」が続いてしまって焦ったことも・・・

さていったい何だったでしょうか?!


難易度がほどほどに高い生きもののカードを背中に付けた先生が

悩みつつも、スムーズに当てる。

そうすることで児童も挑戦してくれると思いますので、

準備を工夫してみてください!



藤田 航平 ふじた こうへい
公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会

事務局次長・マーケティング部



大学生でネイチャーゲームをはじめて、気づけばネイチャーゲーム歴は20年。小さな頃からカブトムシが好きで、当時はテレビや図鑑でしか見られなかった世界のカブトムシの絵をよく描いていました。だから、「ツノはありますか?」って聞いちゃったんでしょうね。「カブトムシだったらいいな」という気持ちからの思い込み・バイアスが「迷宮入り」のきっかけだったように思います。

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